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イチ推し

海藻「カジメ」商品化計画 「厄介者」を健康食品に

◆南伊豆 漁師と移住者 試行錯誤

カジメの商品化に取り組む大野良司さん(左)と乙幡隆志さん=南伊豆町で

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 アワビやサザエ、ウニなどの餌となる一方、台風や荒波の後に海岸に打ち上げられて「厄介者」扱いされる海藻のカジメ。あくが強く食用には向かないとされているが、南伊豆町の漁師と移住者が商品化を進め、販売まであと一歩に迫っている。乾物や粉末などの試作品をもらい、食べてみると口いっぱいに磯の香りが広がった。

 「厄介者。苦情の多い海藻だよ」。地元の漁師大野良司さん(72)は、東京から移住してきた製麺業乙幡隆志さん(66)とともに商品化に取り組むカジメを笑いながらこう表現した。

 実際、台風10号が過ぎ去った後の八月下旬、同町の弓ケ浜海水浴場には、大量のカジメが打ち上げられ、悲惨な状態になっていた。

 「ここまでひどいのは初めて。よその海へ行くという人もいた」。近所の七十代女性は困り果てた。弓ケ浜がある湊区の奥村豊区長(67)も「過去にないぐらい多い。生育が良いと聞いていたし、台風がゆっくり通過したことなど悪い条件が重なった」と語った。

大量のカジメが打ち上げられた8月下旬の弓ケ浜海水浴場=南伊豆町で

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 漂着したカジメを放置しておくと、腐って悪臭を放ち、小バエが湧くなど衛生上良くない。観光客の減少にもつながりかねない。通常は地元住民で処分しているが、今回の量は手に負えないと判断し、下田土木事務所へ撤去を依頼。三日間かけて約千立方メートル分を砂浜に埋めて処分した。

 大野さんと乙幡さんは、住民を困らせるこの「厄介者」を食べてしまおうと、四月から本格的な商品開発に乗り出した。

 二人の出会いは地元住民と移住者の交流会がきっかけだった。南伊豆の美しい景色や海に魅了されて移住した乙幡さんは、「せっかく海に恵まれた環境にいるんだから海の生き物の研究をしたい」と大野さんに相談。大野さんは「伊勢エビ漁の手伝いをしてくれるなら」と承諾した。

乾燥させたカジメの試作品

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 あるとき、漁の最中に、伊勢エビがカジメに絡まった状態で水揚げされ、大野さんはふと「カジメを食べている地域がある」という話を思い出した。大野さんによると、九州の一部の地域では食用として用いられているという。乙幡さんとともに「加工すれば食べられるのでは」と盛り上がり、試行錯誤が始まった。

 刻んだり、干したり。あるいは、粉にしてみたり。あらゆる方法を試した。毎日のようにカジメを食べ、「外出時に持っていないと不安になることもあった」と乙幡さんは笑う。

 始めたころは「そんなことしてどうするの」と不審に思われたこともあったが、気に留めなかった。そして、ついに難題であったあく抜きやカビの発生を防ぐ方法を突き止めた。方法は企業秘密という。

 二人によると、カジメは健康に良く、地元での試食会後には便通が良くなったと好評だった。乾物と粉末、錠剤を作り、販売する計画で、既に興味を示している地元の店舗もあるという。今後、価格設定などの詳細を詰める。

 二人は「少しでも打ち上げられたカジメを持って帰って、活用してもらえるようになれば」と願っている。

 <カジメ> 県水産技術研究所伊豆分場(下田市)によると、伊豆半島では主に東部と南部の水深10〜20メートルぐらいに生息する。根元から葉先までの大きさは約2メートル。岩場に生え、台風や荒波で岩盤から剥がれ落ち、岸に打ち上げられる。かつては畑の肥料として用いられていた。

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山中正義記者(熱海通信局)

 神奈川県出身。水辺に縁があるようでこれまでに琵琶湖のある滋賀県、日本海を望む富山県を経て、8月から太平洋を目の前にした熱海へ。カジメは知らなかったが、ラーメンに入れたり、ご飯にふりかけたり、いろいろな食べ方を楽しめるという。自分のお気に入りの食べ方を探そう。

 

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