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イチ推し

聖一国師生誕の地 茶の祖を訪ね

◆葵区 峠を越え10キロ 歴史薫る古道

足久保側から古道「ティーロード」に入る内野清己さん(右)と筆者=静岡市葵区足久保地区で

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 今年の静岡茶の取引は一番茶の価格が平成の最安値を更新し、急須で入れる湯茶の消費低迷ぶりが際立った。改善への糸口を歴史に求め、静岡茶の祖とされる聖一国師の生家がある静岡市葵区大川地区を訪ねた。国師がお茶を伝えたといわれる古道「ティーロード」を歩いた。

 古道は、国師が茶の種をまいたとされる足久保と古里の栃沢を結ぶ峠越えの約十キロ。二十五年ほど前、国師を生かしたまちづくりを目指した大川地区振興協議会が「ハイキングしやすい道に」と整備し、名付けた。かつては栃沢の人たちが行き来した唯一の道だった。

生家前に立つ聖一国師誕生地の石碑=静岡市葵区大川地区で

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 七月末、夏の日差しの下、「自分も久しぶり」と話す栃沢の茶農家内野清己さん(60)に同行を頼み、足久保側から山に入った。上りは勾配がきつく、道も狭い。ルートの目印は所々にある木に縛った白布で、初めて歩く人では進むのが難しい。

 登ること一時間半。釜石峠(八四七メートル)の山頂付近に着いた。下界は雲に覆われ見えなかったが、涼しい風が首筋に心地よかった。国師が峠を越えたのは、母親に会える数少ない時で、心弾ませていただろう。下りの勾配は比較的緩やかで、山を下りた農道脇には内野さんが植えたカエデが大きく育っていた。

 大川地区で国師の調査・研究が始まったのは一九九三年ごろ。振興協議会はティーロードのハイキングを八年ほど続け、国師ゆかりの地も訪ねて学んだ。それらは二〇〇二年の生誕八百年記念事業に生かされたほか、今も続く春の大川お茶まつりにもつながっている。

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 こうした国師を生かした地域活性化の活動は、三年前に国師顕彰会の事務局を静岡商工会議所が担うようになって、国師ゆかりの京都、福岡の経済界にも広がりを見せている。

 生誕八百年記念事業で茶会を企画した地域おこしアドバイザー花井孝さん(75)は「お茶のある豊かな暮らしを提案したかった。大川に千人が訪れ、かつてないにぎわいと言われた」と振り返る。「今後は国師を静岡県のお茶の祖という認識を広めて、振興に生かしたい」と話す。

 <聖一国師(しょういちこくし)> 鎌倉時代の高僧で1202年、現静岡市葵区栃沢に生まれる。4歳の時、久能寺(静岡市駿河区の久能山)に預けられた。宋(中国)で7年学び、仏典、技術、文化を持ち帰る。お茶のほか、まんじゅう、うどん、そばに加え、製粉のための水車動力の技術なども伝えた。43歳で栃沢に母を訪ね、茶を伝えた。54歳で東福寺を開山し、79歳で一生を終えた。

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松本利幸記者(静岡総局)

 夕刊、朝刊県内版の茶況欄を担当する。今年の静岡茶の価格は一番茶に続いて二番茶も振るわず、茶農家は「茶業界のリーマン・ショック」と危機感を募らせる。案内をしてくれた内野さんは「我慢の時だね。やるべきこと、自分にできることはきっちりやりたい」と前を向いていた。

 

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