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イチ推し

清照由苑で両河内茶を満喫 心安らぐ 極上の一杯

◆伝統守りたい 亡き姉の志 母と継ぐ

「両河内に来てお茶を飲んで」と話す鈴木照美さん(左)と娘の杏奈さん=いずれも静岡市清水区で

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 県内の有名茶産地、静岡市清水区。中でも、山梨県との県境に近い両河内(ごうち)地区は最高級で知られる「両河内茶」の産地だ。その名を広めるべく奮闘する鈴木照美さん(60)と杏奈さん(29)の親子を訪ねた。

 鈴木さん親子が営む「清照由苑(せいしょうゆえん)」。物置になっていた馬小屋を改修して造った茶室「摘草庵(つみくさあん)」に招き入れてくれた。静岡市中心部から車で約一時間、県外からも最近は北海道から訪れた人もいたという。

 十畳ほどの広さの中に赤いじゅうたんが敷かれ、まずお茶の花を浮かべたウエルカムティーが出された。

 「あぐらでも、リラックスして飲んで構いませんよ」。杏奈さんの一言に救われた。「お茶は子どもから大人まで誰が楽しんでもいい。格式高くあることはないので、作法もあまり気にしないでください」

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 続いて、両河内唯一の抹茶「白拍子(しらびょうし)」。飲みやすい口当たりに泡立ち、心が落ち着く。夏季ということで氷を入れてもらった。「渋味が抑えられるはずです」。手作りの和菓子の甘さと合う。時間の流れを忘れそうだ。これで税抜き八百円。

 照美さんによると、山あい深く、霧がよく出て朝夕の寒暖差が激しい両河内地区だからこそ、できる味という。茶葉を手摘みすることで、よりまろやかに仕上がると話す。

 両河内地区で今も茶業を営むのは七十三軒。高齢化や茶価の低迷により、この十年で約七割減った。自分で栽培から製茶まで完結する自園自製に取り組む農家は三十九軒しかない。

 清照由苑という名は杏奈さんの姉・まゆさんが、父・清功さんを継いだ後、自身と両親の名を合わせて付けたものだ。

 「百年以上続く両河内茶を絶やしたくない」との思いから、まゆさんは抹茶の開発や静岡伊勢丹(静岡市葵区)などでの小売りにも乗り出した。二〇一三年度には白拍子が静岡市のブランド認証事業「しずおか葵プレミアム」に選ばれた。

(上)抹茶「白拍子」を飲む記者(下)抹茶「白拍子」と手作りの和菓子

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 まゆさんは持病が悪化し、一六年秋に三十二歳の若さで他界する。偶然にもその時期、白拍子の注文が相次いだ。照美さんは「忙しくて悲しむ時間もなかった。お茶があったから今の私たちがあって、それを届けたい一心だった」

 まゆさんの思いは今も受け継がれる。新たに紅茶を生みだし、市からは女性が企画、開発に貢献した優れた商品として「しずおか女子きらっ☆ブランド」の認定を受けた。

 照美さんは「まゆの思いは、両河内に来てもらうこと。お茶が育った土地の水でお茶を飲んでほしい。両河内に足を運んで」と話す。来年三月までは六種のお茶の飲み比べや茶染め体験もできる。(問)清照由苑=090(3481)1828

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谷口武記者(静岡総局)

 千葉県出身の25歳。初任地・静岡市で勤務して1年を迎えた。ピッチャーに入っているお茶といえば麦茶だったが、静岡ではほとんど見たことがない。花粉症対策にお茶を飲むというのは、県民にとっては常識なのだろうか。

 

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