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イチ推し

マグネシウム加工技術 軽くて丈夫 福祉に優しい

◆富士宮「マクルウ」のヒット商品

軽量のつえ「フラミンゴ」と安倍信貴さん=富士宮市のマクルウで

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 軽くて強いマグネシウムの合金を、つえや車いすなど福祉機器に加工してヒットさせた企業が富士山麓にある。素材の輸入から加工まで一体で手掛ける強みを生かし、近年は家具や音響機器、ドローン、医療分野へと進出。そんな挑戦を続ける「マクルウ」(富士宮市山本)で、マグネシウムの魅力を聞いた。

 鉄の加工会社を経営していた安倍雅史社長(77)がマグネシウムと出合ったのが創業のきっかけ。東京の化学メーカーでマーケティングを担当していた長男の信貴常務(46)も素材に可能性を感じ、二〇一〇年に会社を設立した。

田中選手が使う車いす=富士宮市のマクルウで

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 会社は商社としての業務もあり、パイプやワイヤに加工されたマグネシウム素材を中国から安く輸入できた。だが曲げると割れるなど破断しやすいうえ、輸入素材は不純物も多く、加工は難しかった。

 このため雅史さんらが二年半かけ、熱処理条件や潤滑素材を組み合わせた「冷間引抜(ひきぬき)加工」と呼ばれる技術を自社で確立。パイプの太さを変えたり曲げたりすることが可能になった。

 だが販路開拓は簡単ではなかった。マグネシウムは燃えやすい削りかすの管理が難しく、工作機械の入れ替えも必要なため、鉄やアルミニウムなどを扱う大手メーカーは導入に及び腰。そこで信貴さんらは顧客開拓のため、PRも兼ね自社で製品作りに乗り出した。

無電源スピーカー「バイオン」=富士宮市のマクルウで

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 まず手掛けたのがつえ。軽さと頑丈さは福祉機器と相性がいいのが理由だ。持ち手を一体化した形状から「フラミンゴ」と名付け、ピンクに塗装した。重さはわずかリンゴ一個分(二百三十グラム)。価格は長さやモデルによるが一万円弱で、「高価格帯の中で安い方」に設定した。

 福祉機器展での出品は一四年。一七年春に通販経由で入手したらしい女優の冨士真奈美さんがテレビのトーク番組で紹介。一日で三百本ほどの注文が殺到した。フラミンゴはその後、伸縮できるタイプを加え、相手先ブランドによる生産(OEM)供給も開始。累計四千本を売るヒット商品となった。

パイプ部分にマグネシウム合金を使った子ども用家具シリーズ。木材は天竜材などを使用=富士宮市のマクルウで

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 福祉機器では、四点つえや車いす、ストレッチャーの加工も手掛ける。東京パラリンピック・車いすテニスでメダル獲得が有力視される田中愛美選手が乗るのも、橋本エンジニアリング(浜松市浜北区)が設計し、マクルウの素材供給・加工の車いすだ。このほか、自社で子ども用家具や踏み台、素材提供・加工でドローンなどを手掛ける。

 今では多分野の企業から注文が相次ぐようになり経営も軌道に乗ってきた。竹筒のような形のスタンドにスマホを差し込む無電源スピーカー「バイオン」は、英国向け輸出を準備中だ。

 「マグネシウムを知ってもらい、広めたかった。私たちの商品が売れるより、マグネシウムが身の回りで当たり前の素材になり、いまのアルミニウムぐらい使われるようになれば」と語る信貴さん。最終的には工程をさかのぼり、素材採掘や精錬も手掛けるという大きな夢があるという。

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前田朋子記者(富士通信部)

 マグネシウムは比重が鉄の4分の1、アルミの3分の2。埋蔵量は7番目に多い金属だそうなので、今後いろんなところでお目にかかるかも。今回は4月末に一般向けに開かれたマグネシウムの祭典「マグフェス」にもお邪魔し、うっかり勾玉(まがたま)ならぬネックレスの「マグ玉」を買ってしまった。軽くて肩が凝らず、愛用しています。

 

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