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友へ 鎮魂の凧揚げ 「む組」同級生ら

亡くなった武藤英徳さんの法被を羽織り追悼凧を見つめる同級生の井本浩史さん=2日、浜松市中区で

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 浜松まつりが三日始まる。五日までの期間中、浜松市南区の凧(たこ)揚げ会場では、百七十四町の凧が大空を舞う。子どもの誕生を祝う初凧が中心だが、中には故人をしのぶ凧もある。中区の向宿(むこうじゅく)町「む組」では、準備する十三枚中一枚を「追悼凧」として、人々に慕われながら、昨年九月に五十五歳で亡くなった地元の男性にささげる。

 む組の追悼凧に名前が刻まれたのは、同町の凧揚会メンバーだった武藤英徳(ひでのり)さん。二日朝、地元の上下神社本殿から運び出された凧の中に、「英徳」と記された四帖(じょう)凧があった。「む組」の凧印は、白地に赤色で平仮名の「む」の一文字を大書きしている。

 追悼凧の発起人となったのは、凧揚会役員の井本浩史さん(55)。「(凧印は)武藤の『む』と同じだと言って、本人は気に入っていた」と振り返る。子どものころから一緒にまつりに参加してきた仲で「今年も『ひで』を凧場に連れて行きたかった」と武藤さんの法被を羽織って凧を運んだ。

 武藤さんは向宿で生まれ育った。クリスマスが近づくとサンタクロースの格好で地元の子どもたちにプレゼントを配り、まつりでは初子祝いの席を率先して盛り上げるなど、地域の絆を深める中心人物だった。凧揚会のメンバーは「学校でいう生徒会長のような存在だった」と話す。

 もめごとがあると間に入って両者の意見を聞き、冷静に調整する手腕は一目置かれ、「頼れる相談役」として若手からも好かれた。近年、肺腺がんを患い、昨年のまつりでは友人たちに「これが最後だよ」と漏らしていた。

 井本さんが武藤さんの家族に追悼凧を提案したのは四月初旬。「喪中で初子祝いの場で迷惑をかけるのでは」と一度断られたが、同じ町に住む武藤さんの母親が「大好きだった凧が空の上の英徳の近くまで飛んだら、本人も喜ぶだろう」と後押しした。

 地元の人たちが手作りした凧は、四日の昼すぎに揚げる予定。会場には武藤さんの妻と娘二人も駆けつける。「きれいに空に舞わせるよ」。井本さんは真っすぐ凧を見つめた。

(大城愛)

 

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