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浜松まつり

新橋組・斉藤さん一家、待望の女児 家族一つに愛の初凧

◆18歳長男バイト代を費用に

待望の女の子の愛菜華ちゃんの初凧を揚げる斉藤さん一家=4日、浜松市南区の凧揚げ会場で

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 初子と言えば“長男”を指した時代も今は昔。現代の浜松まつりでは、女の子も同様に町にとっての宝だ。浜松市南区の新橋(にっぱし)町「新橋組」の初子で、会社員斉藤智昭さん(34)、貴代さん(43)夫妻の長女愛菜華(ななは)ちゃん(1つ)は四人きょうだいの末っ子。家族にとって待望の初めての女の子となる。まつり二日目の四日、家族五人が思いを一つにして揚げた初凧(はつだこ)は、悠々と大空を舞った。健やかな成長を約束するかのように。

 前日の不安定な天気の影響で、一日延期となった初凧揚げ。智昭さんは「雨だと会場に来る人も少ない。せっかくの愛菜華の大舞台。たくさんの人に祝ってもらいたい」。思いは実ったのか、この日は快晴。気持ち良いほどの風が会場を吹き抜けていた。

 凧糸を先頭で引っ張る「凧先」を務めたのは長男で大学生の海杜(かいと)さん(18)。通常は熟練の町衆が担う大役を、この日は町の計らいで引き受けた。海杜さんが勢いよく糸を引くと、みるみるうちに凧が舞い上がった。それでも、凧を押す風で、海杜さんの体が引っ張られる。すかさず町衆が助太刀して、協力して踏ん張った。

 凧が宙で安定すると、次男の凱哉(がいや)君(10)と三男の叶夢(かなむ)君(9つ)の二人がこの一カ月、練習してきたラッパの演奏で成功を祝った。その後、町衆たちが家族六人を肩車。貴代さんの目には涙が浮かんでいた。

 貴代さんは、前夫との子の海杜さんを連れて二〇〇七年に智昭さんと再婚、三人のきょうだいが生まれた。「海杜が受け入れてくれるか不安だったけど」。貴代さんはそう思っていたが、不安は一蹴された。海杜さんは新しい家族に喜び、現在は、家族のアイドルの愛菜華ちゃんにありったけの愛情を注ぐ。

 二月には、海杜さんは「愛菜華の初凧の費用を出したい」と申し出た。「自分の好きな浜松まつりを、将来、愛菜華にも好きになってもらいたかったから」。市内の飲食店でアルバイトしてためたお金をためらいなく費用の一部に充てた。

 貴代さんが子どものころは、まだ長男の誕生を祝う慣習が今より残っていた時代。「町によっては、女の子は揚げないという話は聞きましたよ」と振り返り、「今は次男でも女の子でも、初凧を揚げたいというだけでウエルカム。町が逆にお願いするくらい」と、当然のように話す。

 海杜さんの思いを乗せて高く揚がった凧の糸を、この日、家族の絆を確かめるように五人で引いた。傍らで糸を見て不思議がる愛菜華ちゃんが、そのことを知るのはまだ先の話になる。大役を務め上げた海杜さんは「大きくなった愛菜華と、一緒にまつりに参加したいな」と、新たな目標を口にした。

(鎌倉優太)

 

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