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NIE最前線 教育に新聞を

父母や住民も学ぶ 教室から地域へ

 「教育に新聞を」というNIE。それは何も教室の中だけにとどまらない。学校を一歩出て、校区の図書館や公民館で新聞を教材に父母や住民と学ぶ「地域NIE」が各地に広がっている。

 四月二十七日、磐田市三ケ野の田原公民館。三浦せつ子さん(67)が開いて見せた古びた大学ノートに、集まった中高生とその母親たちの視線が集中した。一行十五字の小さな文字の羅列。「うわっ細かい」「たくさん書いてあるけど、読みにくそう」。ノートにはほぼ半世紀前、三浦さんが十八歳の時に始めたという新聞の切り抜きがびっしりだ。

 公民館で三年ほど前から月例となっている地域NIE教室。近くの神明中学校で社会科を教える横井純夫講師(60)が、生徒と卒業生、地域住民に呼び掛けて始めた。

 教室といっても、堅苦しさはない。来たい人が来られる日に参加して、茶菓子も用意した小部屋で、その日の新聞を読んで気になったことを気軽に語り合っている。ちょっとしたサロンの雰囲気だ。

 この日の“ゲスト”三浦さんは、市の男女共同参画センターで新聞クリッピング講座も教えている切り抜きの達人。

 「実はね、私、若いときは不良になってやろうと思ったんだよ。でも、どうやったらなれるのか分からんかった」といきなり中高生を笑わせる。幼少のころ父を亡くし、中学を出て母の農作業を手伝う三浦さんにとって唯一、「社会との窓口」になってくれたのが新聞だった。「勉強の時間がないし、分からないから学校が嫌いだった。でも、知るってことはうんと大事。悩んだとき、いつも新聞が私を呼んでくれた。新聞を読んで、ものごとを知ることで一歩前へ出られた」

 仕事と結婚、育児に追われる中で続けてきたノートには、ところどころに赤線や添え書きがある。多感な十代の悩みも、料理や子育ても、人生相談も切り抜いた。「毎日切り刻むから、弁当箱を包む新聞がなくなっちゃうと母によくしかられてねえ」

 教室では、全員で朝刊の紙面をじっくり読んだ後、一人一人の意見発表だ。

 この日、中日新聞一面に載った連載記事「ウナギの危機 浜名湖からの報告」の最終回。「身近なウナギの、知らなかった現実にびっくり」と中学生の感想が飛び出すと、「わたしもそれ、切り抜いた」と三浦さん。

 「先生と生徒だけの教室と違い、普段コミュニケーションがない人たちとの会話が新鮮」と神明中OBの松下京平君=磐田南高一年。母親と参加した鈴木麻友さん=磐田北高一年は「三浦さんのノートは当時と今の新聞の違いがよく分かる。私がやっている切り抜きも、ずっと続ければ、今と近未来の新聞の違いが分かるノートになるかも」と意義を再発見したようだ。

 生涯学習担当でもある横井講師は「同年齢だけのクラスより幅広い意見に触れられ、生徒も刺激になる。地域のサークル活動の一つに育てていけたら」とNIEの新たな位置付けを語る。

(編集委員・八木義弘)

 

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