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静岡経済 特集

道を拓く スズキ インド進出の軌跡(番外編) マルチ・スズキ バルガバ会長に聞く

◆優位性は将来も

マルチ・スズキのラビンドラ・チャンドラ・バルガバ会長=同社提供

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 スズキのインド子会社マルチ・スズキのラビンドラ・チャンドラ・バルガバ会長(84)は、マルチが国営だった時代から合弁交渉に携わり、事業の拡大に努めてきた。書面インタビューでは「小型車に特化したスズキの知見がインドに適していた」と振り返り、将来も「優位性は失われない」と展望する。

 −インド政府の調査団の一員として一九八二年に日本を訪れた。スズキを合弁相手に選んだ理由は。

 「市場調査の結果、小型でモダンな低コスト車が必要だと考え、欧州と日本で技術パートナーを探した。小型車も手掛ける大型車メーカーよりも、小型車に特化した企業の方が望ましかった」

 「最大の要因は鈴木修社長(現会長)と会い、さまざまな議論をできたこと。彼は日本式の品質基準と生産性を達成すると約束してくれた。小さな会社で成長意欲があることもアドバンテージと捉えた。従業員の訓練でも最高の提案を示してくれた」

 −スズキは日本式の経営を導入した。

 「長年、私には二つの疑問があった。日本は鉱物などの資源が乏しいのに、なぜ製造業は競争力を持っているのか。そして、なぜ労働者と経営陣は争うことなく一致団結できるのか」

マルチ社長として新車発表会に出席したバルガバ氏(左から2人目)=1993年、インドで(元スズキの中村雄一さん提供)

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 「われわれが学んできた西洋の経営では人事の重要性が強調されたが、それを取り入れたインドの会社は従業員を一つのチームにまとめられなかった。日本で何が行われているかを理解し、インドに適した手法を開発する必要があった」

 「(スズキの)日本人からは、全従業員との継続的なコミュニケーションの大切さを再三、強調された。従業員は日本の経営思想の誠実さに気づくと、あまりちゅうちょなく受け入れ、徐々に会社の成長に向けて一つのチームとして働くようになった。会社は従業員が家を持ち、子どもが良い学校に通えるように支援した。マルチの成功が日本式の労働習慣の導入によることは間違いない」

 −インドの乗用車市場は二〇三〇年に年間一千万台規模との予測も。シェア50%を維持するための課題は。

 「値頃さや限られたインフラなどを踏まえると、インドは他とは違い小型車の市場であり続けるだろう。スズキは先に参入したアドバンテージがあり、マルチはインドと日本の経営を融合させ、市場と顧客を理解する能力がある。時間をかけて競合の五倍の販売・サービス網も築いてきた。この差は縮まらないだろう」

 「三〇年までにインドの自動車産業ではいくつかの技術的変革がある。ガソリン車やディーセル車の削減は避けられず、ITの活用はさらに進むだろう。トヨタ自動車とスズキの提携は、マルチが技術的にも競争力を保つ助けとなる」

(西山輝一)

 <ラビンドラ・チャンドラ・バルガバ> 1934年生まれ。インドの官僚として25年間にわたって行政に関わった後、国民車事業の主要メンバーとして81年に国営企業マルチ・ウドヨグ(現マルチ・スズキ)に移る。マーケティング部長を経て85年に社長昇格、90年から会長を兼任した。97年に退任したが、2007年に会長として復帰した。

 

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