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静岡経済 特集

道を拓く スズキ インド進出の軌跡(7) 次代へ布石

◆経営資源集中 協業も

車体をつり上げて運ぶ最新の組み立てライン=インド・グジャラート工場で(スズキ提供)

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 つり上げられた車体が次々と流れてくる。世界各地にも輸出する小型車「バレーノ」の組み立てラインで、従業員らがタイヤなどの部品をてきぱきと取り付けていく。「インドで生産を始めた三十五年前とは格段の違い」。スズキ会長の鈴木修(88)は二〇一七年九月、インド西部グジャラート州の新工場を視察し、手応えを感じた。

 「現場にはカネが落ちている」と考える鈴木は、長さ八百メートルのラインを二時間半ほどかけて点検した。「生産開始から半年にしては、品質やコストへの取り組みが素晴らしい」

 インド三カ所目の生産拠点のグジャラート工場は、スズキが現地で初めて全額出資した生産会社が運営している。既存子会社のマルチ・スズキと競い合わせて相乗効果を狙う。

 「インドは世界のほかの市場と比べて大きな違いがある」。マルチ・スズキ会長のラビンドラ・チャンドラ・バルガバ(84)は、ずっと小型車が中心という市場特徴を指摘する。小型車を得意とするスズキは進出以来、需要に応えた車づくりで乗用車市場の首位を走り、インドに自動車産業を根付かせてきた。

 スズキは四輪車事業で一二年に米国販売から撤退し、今年に入ると中国での合弁生産を解消すると発表した。世界の二大市場から手を引く代わり、インドにヒトやモノ、カネを集中して投じる道を選んだ。

 インドの乗用車市場は三〇年には現状の三倍の一千万台に届くとされる。中国と米国に続く世界三位の規模になっても、スズキは乗用車シェア50%の維持を目指す。社長の鈴木俊宏(59)は直近の株主総会で「未来をかけた挑戦だ」と掲げた。消費者の所得向上で車の好みが中型や大型に移る可能性も視野に入れる。

 さらに「脱ガソリン」が世界の潮流となり、インド政府は電動車の普及を掲げる。車の電動化は避けて通れないが、先行するのは電気自動車(EV)かハイブリッド車(HV)か、見通しはまだ立てにくい。会長の鈴木は「一社で対応することはできない」とみる。

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 スズキはトヨタ自動車との協業に動いた。一七年から検討を進め、これまでに合意した内容は、いずれもインドが舞台となる。完成車の相互供給ではスズキがバレーノなど、トヨタがカローラのHVなどを提供する。スズキはトヨタと協力してEVも開発していく。

 バルガバは「マルチ社が技術的にも競争力を保つ助けになる」と期待する。

 四十年ほど前、スズキは排ガス対策エンジンの供給をトヨタから受けたが、当時と異なるのは「対等」での関係づくりにある。

 今年五月には、スズキがトヨタの支援でHVの次世代システムを開発するほか、スズキの開発車両をトヨタで生産し、それぞれアフリカ市場にも供給する方針が公表された。「(トヨタが世界各地で目指す)『この町いちばん』を実践してきた会社」。トヨタ社長の豊田章男(62)は、こうスズキを評する談話を出し、学ぶ姿勢をみせる。

 スズキが市場を開拓したインドを今、世界の自動車大手がこぞって注目している。会長の鈴木は手綱を締める。「達成感や幸福感を味わうのはつかの間。次の三十五年を考えている」。挑戦に終わりはない。

(敬称略)

=終わり

(西山輝一が担当しました)

 

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