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リニア湧水問題 水守るため早期着工を

◆東京都立大 今田名誉教授インタビュー

「着工が遅れることは誰の利益にもならない」と話す今田徹さん=東京都豊島区で

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 リニア中央新幹線の南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、今田(こんだ)徹・東京都立大=現首都大学東京=名誉教授(トンネル工学)は本紙のインタビューに応じ、「先進坑や導水路トンネルに早く着工しなければ、大井川に戻せる水量が減るだけ。感情論ではない議論を進めてほしい」と述べ、県側が求める湧水の全量回復に近づけるためにも、十二、十三日の県とJR東海の協議に科学的、現実的な話し合いを期待した。

 今田教授は、JRが二〇一四年に設置した「大井川水資源検討委員会」の委員長を務めた。トンネルや地下水、地盤工学の専門家らと大井川への影響をいかに低減するか、一年かけて検討。導水路やポンプアップ設備で湧水を戻す工法などをJRに提案した。

 県とJRの協議は、山梨・長野県へ流出する湧水は先進坑が貫通するまでの一定期間、事実上戻せないことを巡り、再び暗礁に乗り上げようとしている。

 今田教授は、工事で出た湧水を一滴たりとも漏らさずに戻すことは「物理的に不可能」との見解。「最終目標は大井川水系に影響を与えないことで、施工中に水を出さないことではない」と語った。

 影響を最小限に食い止めるためには「早く先進坑を掘って、ある程度の正確な地質を把握しなければ意味のある対策をとれない。トンネルは掘りながら課題に対応する技術だ」と続け、早期の着工が望ましいと強調した。

 県側は地下水や沢枯れなどの想定、対策もJRに求めている。「トンネルを掘れば、沢枯れなどの影響は必ず出る。できることと、できないことを科学的に見極めたうえで、対策を冷静に協議することが必要だ」と述べた。

(五十幡将之)

一問一答

◆湧水流出 避けられない/貫通なら自動車道にも希望

 −検討委は湧水の全量回復を検討したのか。

 本質的な議論は、工事の影響が安定した時点での湧水の扱い。工事中の地下水の流出は避けられない。そのため、議論の俎上(そじょう)に上がらなかった。

 −先進坑が山梨・長野工区に貫通するまで、事実上湧水を戻す方法はない。

 山梨工区から導水路トンネルを静岡県に引く案も検討されたが、ルートが畑薙山断層と並走するため、断念された。山梨からパイプを引けば戻せるかもしれないが、流出量から考えると一般的には過度な対応のように思える。

 −一定期間戻せないのは仕方がないことか。

 大井川の平均流量(毎秒約七十五トン)に比べ、一定期間、山梨側に流出する量(毎秒〇・三トン)が中下流域に及ぼす影響が大きいとは思えない。対策を求めるのであれば、県側が科学的に実害を立証して、議論に載せなければ感情論と思われかねない。

 −協議が難航し、着工が遅れることへの懸念は。

 水を戻すための先進坑や導水路トンネルの着工が遅れるほど、失う水が増える。同じ断層でも水が出る所と出ない所があるなど、トンネルは掘ってみないと分からない。不確定な予想を基に議論が長引く間に水を失うのは得策ではない。

 −このトンネル工事の意義とは。

 南アルプスをトンネルで貫けることになれば、一九六〇年ごろに検討されて断念された自動車用トンネルにも道が開ける。東京−名古屋間の物流が変わり、南海トラフ巨大地震で東名・新東名高速道路が寸断されてもライフラインを確保できる。そうした広い視野で利点を考えることもできるのではないか。

 

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