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「青花紙」担い手、89歳1人だけに 草津の中川さん

アオバナの収穫をする中川さん=草津市下笠町で

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 京友禅の下絵づくりに使う伝統的な画材で、古くから近江の名産物とされる「青花紙」をつくる担い手不足が深刻化している。長年、草津市周辺の農家が同市の花「アオバナ」を栽培し、生産を続けてきたが、高齢化などで担い手が年々減少。市によると、今夏に商品用の紙を作っているのは同市下笠町の中川正雄さん(89)のみになった。市草津宿街道交流館の岡田裕美学芸員(28)は「青花紙は大切な草津の歴史だ」として技術継承を呼び掛けている。

 「アオバナは『苦労花』って呼ばれるんや」。夏本番の日差しが畑の青い花を照らす中、中川さんが真っ青に染まった手で三センチほどの花を摘み、首から下げたかごに入れた。

 花は早朝しか咲かず、作業は「日の出とともに始まる」。収穫後、集めた花弁を力いっぱい布で絞り、出た濃紺の汁を、はけで和紙に塗り込む。紙が黒色になるまで数十回むらなく塗り重ね、紙が約三倍の重さになれば、青花紙の完成だ。「摘むのも塗るのも暑くて大変。跡継ぎもないの」と中川さんは語る。

 青花紙は、京都や加賀に伝わる友禅染の職人たちが、下絵に使う伝統的な画材。職人の間には化学染料も普及しているが、岡田さんと東京文化財研究所の調査によると、友禅染など各地の染色関係者百四人のうち、約三割が下絵に青花紙を使っている。「細い線や濃淡が描きやすい」「青花紙は気持ちが高まる」と愛好する人もいるという。

 大正時代、草津では五百の農家が青花紙をつくっていた。普及啓発用に紙をつくる農家は現在も一軒あるものの、商業用につくる農家はおととしに三軒、昨夏は二軒と減っていった。

 後継者確保に向け、市は昨年度から「あおばな紙担い手セミナー」を実施。中川さんらを講師に、昨年は十四人が花の種まき、紙づくりを学んだ。本年度は六人が参加中だが、岡田さんは「中川さんのようにきれいな紙をつくるには、一〜二年では難しい」と語る。

 岡田さんは「江戸時代から変わらない作り方が、令和の時代に伝わっているのはすごい。文化財指定も視野に入れ、継承に向けてできることをしたい」と意気込んでいる。

 (作山哲平)

 

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