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ケアが必要な子の「休息入院」拒否続く 県内の複数医療機関

長男のたんを吸引する女性。介護する家族が休息するための「レスパイト入院」を断られ、負担が積み重なっている=彦根市内で

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 酸素吸入などの医療的ケアが必要な子どもが、県内の複数の医療機関から、介護する家族を休息させるための短期間の「レスパイト入院」を、二〇一六年夏ごろから拒否され続けていることが、分かった。背景には、子どもが動き回るため看護師の見守りが常に必要で、病院側に人的な余裕がないことなどがある。“頼みの綱”の制度が機能せず、介護の負担が家族にのしかかる状況が続いている。

 「もう限界」。生後すぐに気管切開し、酸素吸入などの医療的ケアが必要な長男(8つ)と、保育園に通う次男(5つ)を育てる彦根市の女性(47)は、疲れた表情で打ち明けた。

 早産で生まれた長男は、ダウン症や肺高血圧症など複数の疾患がある。気管軟化症のため気管切開し、呼吸補助具「カニューレ」などをつけ、常時、酸素を吸入する必要がある。多動性障害もあり、成長とともに動きが活発化。特別支援学校に通わせているが、自宅ではテレビ台によじ登って落ちたこともあり、常に見守りが必要だ。夫とは別居中で、一四年から実家で両親と暮らし、日中は女性が働いて生計を立てている。

 女性は一四年夏ごろから、守山市内の病院で月に一回ほど一週間程度の期間でレスパイト入院を利用してきた。だが、長男が酸素チューブやカニューレを自ら外すようになり、酸欠状態に陥ったこともあった。病院からは、看護師不足などで十分に見守れず責任を持てないとして、一六年夏ごろを最後にレスパイト入院を受け入れてもらえなくなったという。

 長男を出産した長浜市の病院や、重症心身障害児を中心に受け入れる草津市の施設にもレスパイト入院を相談したが、守山市の病院と同様の理由で断られた。かかりつけの彦根市の病院でも、重度の心身障害児を優先的に受け入れていることや、人手が掛かることを理由に、拒まれたという。

 同居する両親は高齢で、頼ることは難しいという。平日は午前に三十分間と夕方に二時間、福祉サービス事業所などの介助を得ながら長男を介護するが、医療的なケアは看護師や家族しかできないため、女性が主にせざるを得ない。夜間には介助がなく、女性の就寝中に長男が呼吸補助具を外す恐れがあるため、不安で眠れない日が続く。

 女性は「一日でも預けられる病院があれば、疲れをリセットできるのに。病院は子どもの命を助けてくれたが、後のフォローがないなんて」と漏らしている。

◆受け入れ機関も苦悩 

 レスパイト入院は、患者の家族が病気になったり冠婚葬祭などの急用ができたりした時や、家族の介護の負担を軽減するため、県内では、主に八つの急性期病院などで受け入れている。利用者の多くは寝たきりの重症心身障害児だが、近年は、健常児と同じように生活する「動くケア児」も増加しており、受け入れが課題となっている。

 女性の入院要請を拒んだ医療機関の一つの、長浜市の病院の担当者は「スタッフ数は限られているため、受け入れ対象を、医療介入が必要で、体動が少なく、安定している子どもに限っている。入院させてあげられないのは、大変心苦しい」と打ち明けた。

 草津市の施設は、1病棟に患者が40人いるが、夜間は看護師を3人しか配置できず、呼吸器管理などの対応に追われるという。施設長は「患者の中には急変する人もおり、レスパイト入院の子どもに常時は付き添えない。受け入れる以上は、患者の安全を確保しなければならない」と弁明。「ヘルパーに夜間付き添ってもらい、危険行為があった際に、看護師に伝えてもらうことができたらいいのだが」と頭を悩ませた。

 県健康医療福祉部によると、動くケア児のレスパイト入院が断られる例は表に出にくく、把握できていないという。担当者は「医療従事者だけで見るのは限界があり、福祉も関わらなければ解決しない」とし、「動くケア児が県内に何人いるのか、実態調査を検討している」と話した。

 医療的ケア児の支援に詳しい、愛知県医療療育総合センター中央病院の三浦清邦副院長は「看護師が動ける子どもに1対1で付くことは、人手がない病院では厳しく、断られるのが一般的。見合った報酬もなく、どの現場でも難しいのが現状だ」と話し、制度変更の必要性を指摘した。

 (浅井弘美)

 

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