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働く障害者の請求、支援必要 国の未払い賃金立て替え制度

男性利用者への支払いについて、支える会の会員に報告する元男性職員(左)=名古屋市内で

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 会社の倒産に伴い賃金や退職金を払ってもらえない場合、国が事業主に代わって一部を支払う「未払い賃金立て替え払い制度」をご存じだろうか。労働者本人の請求が必要など利用には条件があるが、働く人の重要な権利の一つだ。制度自体を知らない人も多い中、近年、問題になっているのが、働く障害者が当事者になった場合。手続きが煩雑なため、周囲の助けが欠かせない。

 制度は「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づき、一九七六年度に導入された。立て替え払いを受けられるのは未払い賃金の八割まで。厚生労働省と業務を担う独立行政法人労働者健康安全機構(川崎市)によると、支給額のピークは二〇〇二年度の四百七十六億四千二百万円。七万二千八百二十三人に支払われた。一九九〇年代のバブル崩壊後、二〇〇〇年代初頭まで続いた景気低迷の影響とみられる。昨年度は前年度比0・4%増の八十六億九千五百八十四万円だった。

 制度を使えるのは、労災保険に加入する会社などに勤めていて、賃金や退職金が未払いのまま退職を余儀なくされた人。事業活動を一年以上行っていた企業などが対象だ。いつをもって倒産とするかは、裁判所に破産手続きなどの開始を申し立てた日、あるいは労働基準監督署に事実上の倒産の認定を申請した日−の二つ。これらの基準日の六カ月前の日から二年の間に退職した人が請求できる。

 ただし、請求は基準日の翌日から二年以内に本人がする必要がある。対象は、退職日の六カ月前の日から同機構へ請求する前日までに、定期的に支払われているはずの賃金と退職金。ボーナスなど臨時に支払われる賃金は対象にならない。退職日の年齢によって立て替え額には上限がある。

 手続きには、立て替え払いを請求する書類のほか、場合によっては賃金が振り込まれていた口座の通帳のコピーも必要だ。書類の内容を理解できない、必要な書類をすぐに準備できないなど、知的、精神、身体のいずれかに障害がある人にはハードルが高い。同僚同士のつながりが乏しく、孤立しがちなことも大きい。

 障害者が雇用主と雇用契約を結んで働く就労継続支援A型事業所(A型)を名古屋市などで運営していた株式会社「障がい者支援機構」。一七年夏、全国六カ所で働いていた障害者計百五十六人を突然解雇した。同年十月十日から破産手続きが始まり、未払い賃金の立て替え請求期限が今年十月十日に迫っていた。

 元男性職員(43)が気をもんだのは、愛知県内のA型にいた五十代の男性。精神障害があり、請求を呼び掛けたが返事はなかった。

 一人暮らしの自宅にもおらず、住まいのある自治体の窓口では「個人情報」を理由に情報提供を断られた。病院に入院していることが分かったのは今年七月。一七年冬に脳梗塞で倒れたのだという。すぐに駆けつけて説明をし、約十三万円を取り戻すことができた。「請求期限に間に合ってよかった」と、男性職員はほっとした顔を見せた。

 「事業所を所管する市や県が協力すれば、もっと早く助けられたかも」。障害者の立て替え払いの請求などを手伝う「A型問題の被害者を支える会あいち」で活動する名古屋市中川区の社会福祉法人理事大野健志さん(48)は言う。

 厚労省によると、全国の民間企業で働く障害者は一八年六月一日時点で五十三万四千七百六十九人。前年比7・9%増と過去最多を記録した。障害のある働き手が増える今、全ての人が安心して使える制度にしていく必要が高まっている。

 (出口有紀)

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