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<副業?その前に>(中) 弁護士・松丸正さんに聞く

松丸正さん

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 副業が四月に本格解禁され、過重労働が増えないか懸念する声が上がっている。現在、副業している人の多くは生活が苦しく、本業と副業を合わせた労働時間も十分に把握されていないのが現状だからだ。過労死裁判に一貫して関わってきた弁護士松丸正さん(72)は「副業で働かざるを得ない人の安全が守られないままでは、過労死が増えるだけ」と警鐘を鳴らす。

 ―副業している人の実態は。

 副業、兼業する大部分の人は収入が少なく、暮らしに困っている。長時間労働の末に過労死するケースもある。川口労働基準監督署(埼玉)が七月、副業をして死亡したトラック運転手を過労死認定したケースでは、本業と副業の労働時間を合算した結果、一日の法定労働時間(八時間)を超えていた。

 また、副業先で法定労働時間を超えて働いた場合、副業先が割増賃金を払う必要があるが、私は時間外手当が払われているケースを聞いたことがない。労働者も解雇を恐れ、「払ってくれ」とは言えない。

 高い能力を生かして副業として起業などをしているのは生活に余裕のある一部の人にすぎない。

 ―副業をめぐっては、労働時間をどう把握するのかが課題となっている。

 労働基準法では、複数の職場で働いた場合、労働時間は通算する。ただ、労働時間の管理は一社だけでも難しい。多くの会社では労働時間は自己申告。限られた時間で成果を求められる成果主義が広がり、会社が「法定労働時間を守ろう」と呼び掛ければ、社員は労働時間を少なく申告して、サービス残業につながる。

 また、本業と副業の事業主が一人一人の労働者について互いに連絡を取り、法定労働時間内に収めるように合算するのは煩雑で、現実的ではない。

 副業や兼業で働く人の労働時間について、厚生労働省は八日、労働政策審議会に諮る報告書を公表した。その中には「複数の職場での労働時間は通算せず、事業主ごとに管理する」という案が含まれている。最近はインターネットなどを通した個人への業務委託も増加。労働契約に基づいていないので、労働時間には換算されないが、これも働いている時間だ。

 ―働き方改革で残業を規制しても、副業が進むと、過重労働の恐れがある。

 労働安全衛生法では、企業には社員の「労働時間」を把握し、必要な人に医師の面接指導を受けさせることを義務付けている。ただ、この労働時間も副業との通算は想定していない。

 どんな働き方をしても、月百時間の過労死ラインを越えれば、健康だけでなく、家庭生活にも支障が出て、気づいた時には過労死や過労自殺につながってしまう。下手に副業を後押しすれば、働かせ放題になる。

 <まつまる・ただし> 1946年、東京都生まれ。東京大経済学部を卒業後、73年に大阪弁護士会に登録。各地の過労死や過労自殺の労災認定、損害賠償事件に取り組む。過労死弁護団全国連絡会議(東京)代表幹事。

◆副業する人、7割が低所得

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 総務省の就業構造基本調査(二〇一七年)では、副業する人の七割が本業の年間所得が二百九十九万円以下。一方、一千万円以上の層でも副業をしている人の割合が比較的高く、二極化している。

 リクルートワークス研究所(東京)が一八年に会社員ら五千四百六十八人を対象にした調査では、副業した人の半数近くが理由として「生計を維持するため」と回答。「貯蓄や自由に使えるお金を確保するため」は35%だった。

 一方、「時間にゆとりがあるため」とした人は16%だった。

 (出口有紀)

 =次回は十九日

 

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