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<縁のカタチ 多様な性> 弁護士夫夫(上)

映画「愛と法」の上映後に講演する南和行さん(左)と吉田昌史さん=大阪府茨木市の市男女共生センターで

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 「2人で事務所を開けば、同性愛と言わなくても一緒にいられる。同性愛を隠していく人生だからこそ、2人で弁護士をと思った」

 6月下旬、大阪府内であったドキュメンタリー映画「愛と法」の上映会。主人公の一人で、弁護士の南和行さん(42)が上映後の講演で、パートナーの吉田昌史さん(41)と並び、語った。

 2人は男性として男性を愛するゲイ(男性同性愛者)のカップル。2011年に「結婚式」を挙げ、公私をともにする「弁護士夫夫(ふうふ)」として性的少数者(LGBT)や無戸籍者ら社会的に弱い立場の人の相談に乗る。「愛と法」は2年半、2人に密着した作品で、昨年公開された。

 近年、LGBTへの関心の高まりで、講演会や企業向け勉強会の依頼も増えた。南さんが中心に積極的に対応し、年50回に上る。だが、南さんは当初「2人の関係を公にすることは、全く考えていなかった」。

 南さんが男性への恋愛感情に気付いたのは、小学生のころ。気になる男の子と席が近くなるとうれしかった。でも、友達や家族、テレビの中にあるのは男女の恋愛や結婚だけ。女性を好きになれない自分に悩んだ。大学に入り、母と兄にゲイだと打ち明けると、母は泣き、兄は「そんなこと言うな」と怒鳴った。

 吉田さんも中学のころに真剣に好きになった男の子がいたが、「自分がおかしい」と思った。中学時代に母を亡くし、父子家庭で育ちながら、「女性と結婚し、家族を持つのが幸せのカタチと思い込んでいた」。

 2人が出会ったのは、ともに京都大の大学院生だった2000年。ゲイの学生がインターネットで交流する掲示板がきっかけで、南さんは「口数は少ないが、ユーモアがあって純粋」な吉田さんにひかれた。

 農学部出身の南さんは翌年、住宅建材会社に就職。法学部の吉田さんは大学院で研究者を目指していた。恋人同士だが、南さんは会社の人と会うと、吉田さんを「地元の後輩」と紹介。その違和感に悩んだ末に、吉田さんを誘った。「一緒に弁護士になろう」と。その後すぐに会社や大学院をやめ、2年間法科大学院で勉強漬けの日々。吉田さんは06年、南さんは08年に司法試験に合格した。

 南さんが「同性愛を隠す方便」と目指した弁護士。その考えが変わるきっかけは、就職した事務所の先輩たちだった。外国人やホームレスの人権問題に取り組み「人は人種や国籍、環境にかかわらず、皆同じだけ生きる価値がある」ことを仕事で実践していた。ゲイだと打ち明けると、受け入れ、自分の家族のことなどを話してくれた。

 昔の友達も含めて知ってもらおうと、大阪市内で開いた結婚式には家族や友人ら約80人を招いた。南さんは「祝福されることはないと思ってきた僕らにとって、幸せな時間だった」。2年後に2人で開業した。

 ただ、同性婚が認められていない日本では、法的には「赤の他人」。講演会で年配の男性に「親不孝」と批判されたこともある。

 それでも、2人で活動を続けるつもりだ。世の中には異性を好きになる人もいれば、同性を好きになる人もいる。自分の性別に違和感を持つ人もいる。「いろんなパターンがあるし、そのままでいい」と伝えるために。

 (河野紀子)

      ◇

 同性愛を公言する弁護士カップルの姿を通じ、違いを尊重し、だれもが生きやすい多様性のある社会とは何かを考える。

 

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