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<わたしの転機> 食・自然・エコを発信

田植え体験に訪れた親子を見守る小池信雄さん(右)=千葉県大網白里市で

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 定年退職後、都内から房総半島の東側にある千葉県大網白里市の新興住宅地に移住し、悠々自適だった小池信雄さん(79)。しかし宅地開発から時がたち、住民の高齢化も進んだ。「町に活力を取り戻したい」。自然の恵みを生かし、農業や食を中心とした地域づくりを、住民の先頭に立って取り組んでいる。

 現役時代は、河出書房新社で歴史関係の本の編集者でした。老後を意識し始めた五十代、電車の中づり広告で知ったのが、大型住宅地「季美の森」です。ゴルフ場付きが魅力で、一九九五年に家を購入。定年退職した九九年に妻と東京から転居しました。

 引退後は悠々自適で、スポーツや自宅での映画観賞などに没頭する日々。しかし二〇〇八年に自治会役員になり、地域の課題に直面しました。当時、すでに分譲開始から十五年が経過し、住民も高齢化。その後、空き家もぽつぽつ目立ち、駅に向かうバスの本数も減りました。そして住宅地内にあるスーパーの撤退話が出始めた一三年、まずはスーパーを活性化させようと、住民有志百数十人で町づくりについて考える会を立ち上げました。

 周囲は田畑が多く、なじみのなかった農業を身近に感じるようになりました。ただ農家に聞くと、コメを作っても、肥料や農機具の費用などの経費がかさみ、もうけはほぼないとか。後継者不足も深刻で耕作放棄地も増えています。農薬の大量散布の場面にも遭遇し、こんなに多く使われているのかと驚きました。

 僕は、自然の豊かさを生かした町づくりをしたいと、「住民でコメや野菜を無農薬で栽培し、スーパーで売ろうじゃないか」と呼び掛けました。賛同を得たので、会を立ち上げた年に地元農家から水田十アールを借りて栽培を始めました。

 七十代になって初めての農作業。腰に負担がかかると聞き、膝と腰を正しく曲げ伸ばしするよう意識して作業するので、むしろ健康になりましたよ。農業を身近に感じてほしいと、毎年東京から親子を募り、田植えや収穫の体験会を開いています。

 「季美の森野菜」という名前で、さまざまな無農薬野菜の栽培も始まりました。六月にはニンニクエキス入りオリーブ油も試験販売します。一六年秋には、収穫した食材を中心に、住民が住民をもてなすボランティアのレストランをスーパー内につくり、地域の新たな憩いの場になりました。

 自分たちで育てた食材を消費する、とてもぜいたくな暮らし。この町から、食と自然とエコを大事にする地域の在り方を発信したいと思います。

 (砂本紅年)

 

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