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中日懇話会

第533回 「社会」での生き方説く 作家・鴻上尚史さん

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 第533回中日懇話会(中日新聞社主宰)が6日、名古屋市中区のホテルで催され、作家・演出家の鴻上尚史(こうかみしょうじ)さん(61)が「『空気』を読んでも従わない」と題して講演した。日本社会では「世間」が中途半端に崩れた「空気」が存在して強い決定権を持つと指摘し、他人同士がつながる「社会」での生き方を説いた。

 【世間と社会、空気】

 日本には「世間」と「社会」という概念がある。世間とは自分に関係のある人たち。一方の社会とは、将来にわたって関係が生じ得ないだろう人たちとも構成する。昔の日本には「ムラ」という世間だけがあり、社会という概念はなかった。明治になって「ソサエティー」の英語の訳で作られたのが社会という言葉だ。

 日本はかつて、藩や国、もしくはムラなどの集団はあったが、個人がつながる単位はなかった。だから私たちは社会というものに生きることがとても苦手。現代は世間が中途半端に崩れて「空気」が残った時代と言える。議論する時でも空気が重視され、空気が決定権を持つ。

 【特攻兵】

 2年前、特攻に9回出撃しながら生きて帰った佐々木友次さんという元特攻パイロットについて書いた本を出版した。佐々木さんが入院していた札幌の病院に通ったが、「命令に背けないはずの当時21歳の若造が、どうやって命令に背いて上官と戦えたのか」と聞いてみたかった。

 最初は、はぐらかしていた佐々木さんだったが、4回目の訪問で「私は空を飛ぶことが大好きで、戦場に行くことは怖くなかった」という言葉を聞いた。「好き」が動機なのはすてきなこと。戦争の専門家でもない自分が佐々木さんに会いたかった理由が分かった。本の帯には「“いのち”を消費する日本型組織に立ち向かうには」とのフレーズが付いたが、私がずっと探し続けていたことだ。

 【「社会話」を】

 現代は、全く価値観を共有できない人とも、社会の中で付き合っていかなければいけない時代。私は、世間話ならぬ「社会話」をしませんか、と提案している。関係のない、今後親しくなる予定もない人でも、それなりの時間を話せるテクニックのことだ。

 会社という強い世間しか持たない人は、退職後はどう過ごしていいか分からなくなる。月1回のボランティアでも囲碁でも、会社以外のいくつかのゆるやかで弱い世間にも所属することが、自分のアイデンティティーを支えることにつながるのではないか。

 

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