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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第5部 子ども】居場所ここにあるよ 元教員開設フリースクール

 二十六人に一人は不登校。石川県内の中学校の現状で、その数は年々増えている。学校生活から離れた彼らにとって学びの場や居場所となる民間の施設がフリースクールだ。中学生の女の子はぽつりと言った。「ここは気持ちが落ち着く。いてもいいよって言ってくれるから」(辻渕智之)

フリースクールの「IRORI」。勉強も遊びも自由に過ごせる空間で、スタッフが生徒の勉強を見守っている=金沢市山の上町で(久米洋一撮影)

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 午前十時。登校した中学三年の男子は学習机に座り、参考書を開いた。耳にはイヤホン。スマートフォンから音楽を聴いての、ながら勉強だ。「この方が集中できるんですよ」

 見守るスタッフの佐原光さん(32)はとがめない。「僕も受験勉強のころ聴いてましたから」と笑う。

 金沢市山の上町にあるフリースクール「IRORI(いろり)」。中三の彼は一年ほど通う。不登校になったのは「友達と遊ぶとき気を使いすぎて疲れた」から。そして「夏休みの宿題が終わらず、怒られるのが嫌」で学校に行けなくなった。

 ここは何時に来て帰るか、何をするかは自由。部屋の奥では女の子二人がソファに寝転び、スマホを手に「これ、やばいよ」。IRORIのホームページに自分たちの活動の写真が掲載されたのを見て、照れながらも満足そうだった。

 施設は、ちょっと古い二階建ての民家を利用している。「学校で息苦しさを感じる子たちにとっての選択肢の一つとして、ここで生きたっていいんだと思える場所は大切」。運営する一般社団法人「LYHTY(リュフト)」の佐々木健治代表(29)は語る。

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 元小学校教諭。学校に来られない子たちに何もできない自身が悔しくて教員をやめ、三年前にIRORIを開設した。月謝はもらっているが、自前の運営は決して楽ではない。

 昼すぎ、昨春まで通った十六歳の少年が顔を出した。バイトをして買ったというギターを弾いた。「ここに通ったおかげで人見知りをしなくなって友達もいっぱいできて。ここで勉強も教えてもらい、高校で遅れずについていけてます」

 昨年の中三生は十人のうち九人が私立や定時制の高校に進学した。「ここに来なかったら、僕は高校に行けてなかったです」

 フリースクールは学校教育法の定める学校ではない。それでも三年前に全面施行された教育機会確保法は、不登校の子が学校以外の場で多様に学べることへの支援を国と自治体の責務とした。文部科学省は昨秋、フリースクールなどで学ぶ子を「出席」扱いにできると通知を出した。校長の判断で指導記録や通知表の出席日数にも反映される。

 IRORIには今、小中高生の約二十人が通う。節分の日、恵方巻き作りをした。「あ〜」と、どよめく。男の子が机の上にのばしたラップが破れたのだ。「オッケー、オッケー」。周りの子がテープで手際よく直す。イベントは参加自由で、別の部屋に出ていく子もいる。

 完成し、かぶりつく。「ご飯、硬くない?」「おれ、恵方の逆向いて食べるわ〜」。鬼が逃げ出すような声がにぎやかに響いた。

(メモ) 不登校とフリースクール 石川県内の小中学校は児童生徒数が年々減る一方、不登校(年に30日以上欠席)の子は増加。2018年度で小学生が439人、中学生が1172人に上る。中学では26人に1人の計算になる。5年前の14年度は34人に1人だった。文部科学省の調査で不登校の理由としてはいじめや友人、教職員との関係、部活動不適応などが多い。フリースクールの運営に公的補助などはない。常時活動する施設は県内に少なくとも四つある。

石川テレビできょう特集

 北陸中日新聞は石川テレビ放送と「守る」という言葉をもとに取材し、共同報道企画「守る」を隔週で、連載しています。石川テレビの特集は10日午後6時20分以降の「Live News it!」で放送します。

 

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