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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第4部 家族】 悩み抱え込まないで 若年性認知症支援「つむぐ会」

 日常生活を一人で送るのが難しくなる「若年性認知症」の人と家族を支える取り組みを、金沢市内の市民団体が続けている。設立五年目の「若年性認知症の人と家族と寄り添いつむぐ会」。症状が進行すると家族のことさえ分からなくなることもある。会は戸惑う当事者や悩む家族の居場所づくりを進めている。(小佐野慧太)

若年性認知症カフェに参加した中島賛太郎さん、礼子さん夫婦=今年5月、金沢21世紀美術館で(つむぐ会提供)

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 「もうすぐ、いっぱい咲くわ」。中島賛太郎さん(69)=金沢市弥生=は、自宅近くの公園に咲く白いバラを見て、妻の礼子さん(72)に話しかけた。「そうだね、そうだね」。礼子さんは真下の地面をじっと見つめたまま、バラに目もくれず、ただ繰り返した。礼子さんは二〇一〇年、若年性認知症と診断された。六十三歳だった。

 異変に気付いたのは賛太郎さん。礼子さんが、かばんに物を出し入れする動作など不可解な行動を何度も目にした。医師からは「認知症の兆候が見られる」と告げられた。「発症から三年くらいは花を見て喜んどったんやけどな」。賛太郎さんは公園のバラを見ながら振り返った。

 診断から三年後、賛太郎さんは勤務先の電機メーカーを退職した。礼子さんの症状が進行。自宅に一人で残したら事故が起きかねないと、定年を待たずに辞めた。長男は独立しており、一戸建ての自宅に二人で暮らす。「四十年もわしの世話をしてくれた。一緒にいてやらな」。ただ、気が休まらない生活に「毎日、勤務時間十六時間、それも宿直付きだよ」との弱音も漏れる。

 そんな夫婦が三年前から通うのが、つむぐ会が市内で毎月一回開いている「若年性認知症カフェ」だ。カフェは金沢市の委託事業。会では医師、看護師、ソーシャルワーカーなど約十五人がボランティアとして活動しており、認知症の人と話したり、家族の相談に応じたりしている。

 自宅に引きこもらず、家族以外の人とも会話してほしい、楽しんでほしい、そんな思いから始まったカフェ。つむぐ会の道岸奈緒美副代表(45)は「会話がきっかけになって楽器やスポーツなど新しいことに挑戦する認知症の人の姿に、私も励まされている。企業や団体が何か協力できないかと声を掛けてくれることも増えている」と手応えを語る。

 若年性認知症の進行は個人差が大きい。礼子さんは現在、日常生活にほぼ介助が必要な要介護4で、一人で食事ができなくなった。「十年後は、どうなるかわからない。いま笑ってくれる時間が大事なんやな」。賛太郎さんは礼子さんの顔をじっと見つめた。

 若年性認知症 18〜39歳で発症する若年期認知症と40〜64歳で発症する初老期認知症の総称。平均発症年齢は51歳。高齢者の認知症と比べて脳卒中など血管の病気が原因となることが多い。厚生労働省は2009年に行った調査の結果、当時の国内の患者数を3万7800人と推計した。石川県内の推計患者数は約400人。

石川テレビで今夕特集

 北陸中日新聞は石川テレビ放送と「守る」という言葉をもとに取材し、共同報道企画「守る」を隔週で、連載しています。石川テレビの特集は29日午後6時35分ごろからの「Live News it!」で放送します。

 

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