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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第3部 いのち】うそつけない仕事 頼られる存在に 義肢装具士 吉田健次さん

ユーザーに合わせて義足を調整する吉田健次さん=金沢市石引で

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 大腿(だいたい)部で脚を切断した人が使う義足は、体重のかかる重心の位置をどこに決めるかがとても大事です。位置が悪いと、歩いているとき踏ん張れずに膝がガクンと曲がって転んでしまう恐れがあるからです。

 転べばけがをするし、頭を打ってしまうことや車との事故も考えられます。義足は命に関わるもので、使う人の生活や仕事に合わせて作ります。例えば、揺れる船の上で作業する人には、膝が曲がらないように固定もできる義足も作りました。

 大学卒業後、別のメーカーに就職して、航空機部品の設計をしていました。でも本当に必要とされるものづくりがしたいという思いが強くなり、転職したんです。義肢装具は「こんなものを作りました、欲しい人は買ってください」と店で売る商品とは違う。必要だから作ってほしいと依頼がくるんですね。うそのつけない仕事、正直にやれる仕事だと思います。

 実は一年目、患者さんに怒鳴られました。私が病院に持っていった義足に、脚が入りきらなかったんです。その男性にとって脚を切断して初めてつける義足でした。「今日歩けると思って楽しみにしとったんに、どうしてくれるんや!」と怒鳴られました。

 ひたすら謝りました。後日、病院で聞くと、数日前に転んで脚が腫れてたらしいんです。でも、その出来事で義足を使う人の気持ちを知りました。どんな思いで待っているのか。それまで現役でばりばり働いていて、一日も早く復帰したかったんですね。

 いくら良い義足を作っても、作っている人間が信用してもらえなければ義足も信用されないと感じます。この人が作るから大丈夫だ、この人に頼めば何とかしてくれるだろうという信頼関係が大切です。脚を切断した人は簡単に誰かに見せたくはないんですね。

 あんまりややこしい注文を私たちに言うと今後ちゃんと作ってもらえなくなるかも、とためらう人もいます。でも、ちゃんと思っていることを聞き出せないと、調整も作り替えもできません。ユーザーとの付き合いはずっと長く続いていきます。責任は重大ですが、頼られる、必要とされる存在でありたいと思います。(辻渕智之)

【よしだ・けんじ】 1967年生まれ、内灘町出身。金沢大工学部卒。30歳で転職を決心し、養成校に通って義肢装具士の国家資格を取得。2001年に金沢義肢製作所(金沢市石引)に入社。14年から部長。

 

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