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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第3部 いのち】 食べることは生命力を得る活動

患者ののみ込む力を内視鏡で確認する長谷剛志医師(左)=志賀町矢駄で

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公立能登総合病院・長谷剛志医師

 高齢化が進んでいて、嚥下(えんげ)機能が低下する人は今後も増えていくでしょう。自分は口の中だけでなく、食べることを診る「食医」でありたいと考えています。

 約十年前、舌がんを患った漁師の男性と出会ったことがきっかけです。終末期で食事をできず、胃に管を通し栄養を取っていました。あるとき、「好物のイカがもういっぺん食べてみたかった。口から食べれんで、死んでく者のつらさが分かるか」と言われ、ショックを受けました。

 それまで、食べることは「普段、意識しない日々の行為」でしかありませんでしたが、生命力を得るための重要な活動なのだと見直しました。口腔(こうくう)がんの研究や治療を主にしてきましたが、食事のサポートもしようと決意しました。

 まず、患者のかむ力、のみ込む力を評価します。その後、硬さや粘度、付着性などを細かく分類した食事メニューの中から提供できる食事を検討していきます。

 嚥下機能低下の原因はさまざまで、対応が異なります。回復を見込める脳卒中の患者なら、のどの筋肉を動かしたり、ミキサーにかけた料理を食べたりと訓練を重ねて、食事を一般食に近づける。

 加齢で症状が進む患者には、残った能力を踏まえて、食力の会が提案するような介護食を検討し、食の楽しみを長く感じてもらう。背景にある疾患、ライフステージ、家族の意見などを勘案して、最善の方法を考えることが大切です。

 多くの若者は気にしていませんが、三十、四十代から食べる機能は徐々に落ちていくと言われています。肉がかみにくい、お茶や水でむせる、薬が飲みにくいなどの症状を自覚する人は嚥下機能低下の初期サインかもしれないので注意してほしい。

 専門職だけが、食の知識を持っていても仕方ありません。食力の会のメンバーと協力して、若い人や介護に関わる人に情報を発信していきたいと思っています。 (中川紘希)

 はせ・たかし 1975年12月、中能登町小田中生まれ。2001年に北海道医療大歯学部を卒業。06年に金沢大大学院医学系研究科を修了し、公立能登総合病院歯科口腔外科に勤務。15年から同科部長。

 

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