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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第3部 いのち】 その土地でしかできぬ 経験がある

新生児の1カ月健診で母親から話を聞く山城玄医師(右)=珠洲市総合病院で

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珠洲市総合病院・山城玄医師

 沖縄の離島・久米島の公立病院から、珠洲市総合病院に赴任したのは二〇〇八年四月。前任の産婦人科医師が七十歳で退職し、打診されました。年齢や体調面を考えると懸念はありましたが、内浦町(現能登町)生まれで、「最後に地元に奉仕しよう」という気持ちで受けました。

 京都府舞鶴市や富山市など、各地の病院や医院に勤務しました。中でも、大学院生だった二十八歳の時に赴任し、二年半働いたサウジアラビアでの経験は、特に印象深いものです。

 言葉や文化が異なり、苦労しました。設備や機器が不十分で、医療水準も低い。妊娠何週目かを聞いても答えられないし、自分の年齢も分からないと言う妊婦もいました。厳しい状況の中、無我夢中で子どもを取り上げ、産科医としての判断力や能力を身につける土台になりました。

 医師が都市部に偏在する問題が叫ばれて久しい。若い医師は、地方、特に限界集落のような過疎地域での勤務を避けたがっています。私自身は勤務地の希望はありませんでしたが、その気持ちは分かります。医師として得られる臨床経験は都市部よりも少なくなるかもしれません。

 しかし、その土地でしか体験できないこともあります。珠洲に来る前に十年間ほど勤務した久米島でも、島で唯一の産婦人科医でした。

 母子の命や健康に責任があるプレッシャーの中、処置法を巡る一瞬の判断を一人だけでするのは確かに難しかった。でも、妊婦らに掛けられた「先生がいてくれて良かった」との言葉は、自覚と鍛錬を促してくれました。

 一生をその地方で暮らすつもりでなくてもいいと思う。若い医師らは、多様でかけがえのない経験をたくさん積んでほしいと思います。 (加藤豊大)

 やましろ・げん 1949年5月生まれ。金沢大医学部卒。2008年4月から珠洲市総合病院産婦人科医長。

 

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