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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第2部 伝統】 繊細な作業 体が続く限り

納屋で薦作りに励む坂井利男さん=金沢市額谷町で

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薦職人 坂井利男さん 金沢

 金沢市の職員として長年働き、定年退職後は林業関係の仕事をしました。薦(こも)作りの担い手不足を知ったのは、その生活が一段落したころです。自分の健康や達成感のためにもなると思い、やることにしました。最初は肩が痛くなりましたが、今は何ともありません。

 農家の実家に、わらを編むための道具が残っていました。というより残していました。いずれ農家をやりたいという気持ちがあったからです。今は畑仕事や竹やぶの管理をしながら薦を作っています。遠回りしましたが、今が本来の私の姿かもしれません。

 とはいえ、薦作りの経験はなく、最初の一年は試行錯誤でした。薦の作り方を教えてくれる人はおらず、完成品を基に見よう見まねで、どうすればうまくできるか考えました。

 まず、わらの茎以外の不要な部分を取り除きます。それをきねで打って、柔らかくして縄をないます。それから薦を編んでいくのです。

 薦の一番の役割は土塀の保護。編み方が粗いと雨や雪が入りますが、密閉しても湿気が抜ける隙間がなくなる。その原点を忘れてはいけませんが、人の目につくので、見た目も重要です。多くの人に見てもらえるのが、やりがいの一つでもあります。そうやって繊細に作るから長持ちし、趣も出るのでしょう。

 作業は一日に八時間。作業場の納屋に空調はありません。夏は三〇度を超えて、冬は零度を下回ることもありますが、頭に氷を巻いたり、足にカイロを貼ったりしてしのいでいます。

 泥くさい仕事で、気持ちがないとできません。でも伝統を守るためには誰かがやらないといけない。五年、十年、体の続く限り作っていきたいです。 (小坂亮太)

 さかい・としお 1944年生まれ。2012年から薦作りを続ける。

 

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