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桑島さん芸術院書作展入選 俳句で知る 犀星の思い 書の大作に

室生犀星の詩をつづった縦2.4メートル、横6.3メートルの超大作で、審査員特別賞を得た桑島悦子さん=東京都の国立新美術館で

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詩 心込め表現

 半世紀余りの歴史がある書道教室「日本教育書道芸術院」の同人書作展で、金沢市尾張町の桑島悦子さん(66)が審査員特別賞を受賞した。全国に会員約1000人を抱える教室の大規模展に、北陸から唯一出品し、入選を果たした。縦2.4メートル、横6.3メートルの巨大な紙に書き上げたのは、金沢の文豪室生犀星=写真=の詩。極太の筆を振るった。(前口憲幸)

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 「僕の苦悶(くもん)は いつも いちはやく高揚する」。漢字仮名交じりの詩は、この一文で始まる。さまざまな葛藤に、もがき苦しむ犀星の心情を映した作品だ。

 詩の題は「打ち打たるるもの」。大正時代に発表した「愛の詩集」に収められており、文面には「虚偽」や「夢想」「恋愛」などの言葉が並ぶ。文学への思いを募らせ、二十歳で単身上京。苦労を重ねながらも、必死に前を向く犀星の揺れ動く思いがみえる。

 「あふれる苦しみを書で表現できるか、こちらも苦しんだ。ずいぶん悩んだ」。桑島さんは詩の重みをしみじみと語る。東京都内の書道教室への「新幹線通学」を続けて五年目。恩師に提案され、犀星の詩への挑戦を決意したものの「筆を持つたび、プレッシャーを感じた。気持ちがつぶれそうになったこともある」。

 何度も失敗した。一文字目からうまくいかず、自信を失いかけたことも。それでも「あきらめようとは思わなかった」。一日も欠かさず、筆を握った。そして週末になると新幹線に乗り、都内の教室へ。「全身を使って書くというより、心を込めて描いた。紙の上で踊るようなイメージかな」。重視したのは文字の強弱と濃淡、そしてバランス。横〇・九メートルの紙を七枚つなぎ合わせ、仕上げた。

 書作展は東京都港区の国立新美術館で今月七日まで開かれた。応募作品は三百八十八点。昨年は準同人の部で審査員特別賞を得たが、今回は同人の部で受賞。上から三番目の優秀な表彰で、着実に階段を上っている。「自信になった。教室の同じクラスには七十〜八十代の方もいる。もっと学びたい。努力したい」

記念館に自筆句稿など80点

資料約80点を展示し、犀星の俳句に対する情熱を紹介した企画展=金沢市千日町の室生犀星記念館で

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 室生犀星記念館(金沢市千日町)で、企画展「犀星発句道」が開かれている。十代で俳句と出会い、詩人、小説家となってからも句作を続けた犀星の俳句への熱い思いを、自筆句稿や発表作品など約八十点の資料を展示して紹介している。十一月十日まで。(本安幸則)

 犀星は十代のころから新聞に自らの俳句を投稿するなど句作に熱中。文学への出発点となり、生涯作った俳句は、活字や書簡で確認されているもので千九百句ほどあるという。

 俳句の研究にも取り組んだ犀星は、特に松尾芭蕉への尊敬の念が強く、一九二八(昭和三)年には芭蕉論、俳句論をまとめた「芭蕉襍記(ざっき)」を出版。句集も四冊発表している。

 企画展では地元金沢での活動から、東京に出て芥川龍之介との出会いをきっかけに句作を再開した様子などを、自筆句稿や発表作品、句を添えて知人や編集者らに送った手紙やはがきなどを展示。

 犀星の俳句に対する親しみと強い思いを伝えている。

 犀星の孫である室生洲々子名誉館長は「犀星の俳句に関する大々的な展示は今回が初めて。詩人として知られる犀星が、俳句から出た人物だったという新たな認識をしてもらえれば」と話す。

 

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