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万年筆とインクの品ぞろえ全国屈指 大垣の文具店、書き癖みて提案も

川崎文具店で高級万年筆やインクを販売する川崎さん。試し書きコーナーでは250色のインクを試せる=岐阜県大垣市で

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 万年筆とインクの品ぞろえが全国屈指という老舗文具店が、岐阜県大垣市にある。創業九十六年の「川崎文具店」。トレードマークのハンチング帽をかぶる五代目店主の川崎紘嗣(ひろし)さん(43)は、自らを「色彩の錬金術師」と名乗り、手書き文化の良さを伝え続けようとしている。

 二十坪ほどの店内。ぱっと見、ペンやノートが並ぶごく普通の文具店だが、奥へ目をやると、高級万年筆に加え、インク瓶がずらり。その数二百五十色。感心した客が「インクが床上浸水している」と評したほどで、全国各地から愛好家や同業者が訪れる。

 一九二三(大正十二)年、初代の川崎重松氏が滋賀県柏原村(現米原市)で創業。当初は行商の形態をとっていたが、二代目光治氏が彦根の老舗文具店で修業した後、戦後間もなく大垣に文具店を構えた。川崎さんは九年前に店を継ぎ、高級文具の売り場を増設して新たなスタートを切った。

 コンセプトは「文房清玩(せいがん)」。文房は「書斎」、清玩は「見て楽しむ」という意味で、川崎さんは「売り場はいわば私の書斎。買っていただくより、まずは見て楽しんでほしい」と話す。

 万年筆は、国内や欧州のメーカーの五十品ほどを扱う。「万年筆は書けば書くほどペン先が削れて、その人だけのものになる。使い捨てのペンと違って半永久的に使え、自分が生きてきた証しにもなる」と魅力を語る川崎さん。陳列棚に並ぶ一本一本の特徴や書き心地、歴史について、川崎さんは解説を加えていく。

 特徴的なサービスが万年筆とインクの試し書き。店内のインク全種が試せるだけでなく、調光・調色可能な電気スタンドがあり、あらゆる明るさの下での発色が確かめられる。

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 紙の種類も選べ、条件の組み合わせは限りなく、心行くまで万年筆の世界に浸れる。

 「ここに座るお客さんの平均滞在時間は二、三時間。はまると抜け出せなくなる、まさに『沼』です」。こう話す川崎さんも、自らを「沼人」と称している。

 客には必ず試し書きを勧め、書き癖や筆圧を見て、どんな万年筆が適しているかを助言。贈り物の場合も、贈る相手の筆跡を持ってきてもらったり、雰囲気や服装の好みを尋ねたりして、最適な商品を提案する。

 特注のインクの調合にも応じる。「石垣島で見た海の色」「小説の舞台になった鎌倉の古書堂の雰囲気」などと難題を持ち掛けられたこともあるが、丁寧に話を聞きながら、その人の求める色を探る。「試行錯誤が喜びにつながれば、苦労には感じない」と話す。

 メールや通信アプリが主流となった今こそ、手書きの魅力が再認識され始めていると感じる川崎さん。「印刷して作った年賀状でも手書きのメッセージが添えられているだけで目に留まる。字には書いた人自身が表れる。うまい、下手ではなく、自分の字に自信を持ってもらう手伝いができれば」と願い、きょうも店に立つ。問い合わせは、川崎文具店=電0584(78)4223=へ。(芝野享平)

 

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