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<依存の構造>(1) 関電と元助役

森山栄治氏(「たかはま福井県高浜町10年のあゆみ」より)

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 六畳ほどの小さな洋風応接間。小柄な男が一人、机を挟んだ正面のいすにどかりと座った。「地元にカネを落とせ」。男は原発構内の工事を特定の地元業者に発注するよう迫った。要求を断ると目の前の机を蹴り上げ、「俺の言うことが聞けないのか」とすごみを利かせた。

 高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)。町を退職後、関西電力高浜原発の幹部らを自宅に呼び出していた。「できません、は禁句だった。(一方的に話をされる)二時間ずっと耐えるしかなかった」。高浜原発の所長経験者は、うつむきながら振り返る。「関電と森山さんの関係は既に決着がついていた。あちらの方が上。交渉というよりは、意向を聞くだけだった」

 京都府綾部市職員を経て一九六九(昭和四十四)年に高浜町に入庁した森山氏は、人脈を駆使して建設事業を呼び込むなどの手腕を発揮。役場で出世の階段を駆け上がり、七七〜八七年に助役を務めた。退職後、高浜町の建設会社「吉田開発」顧問などになったとされる。隠然と原発構内工事の業者の選定などに影響力を及ぼし続けた。

 原子力事業本部(美浜町)で勤務した関電OBは、呼ばれて京都の森山氏を訪ねたことがある。帰り際にもらった紙袋には、まんじゅうと一緒に商品券が入っていた。後ろめたさを感じたが、拒否して怒らせることは避け、ひとまず受け取った。商品券の封は開けていない。「結局、言えないものを受け取ったという負い目を感じさせるためだったのではないか」。役員らの金品受領が明らかになった今、そう理解している。

再稼働を目指して安全対策工事が進む高浜原発1、2号機

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 複数の関電OBによれば、森山氏が金品を渡すようになったのは、少なくとも三十年ほど前。森山氏と接点があった別の関電OBは振り返る。「関電と地元の有力者の森山さんは、高浜3、4号の増設を通じて協力関係にあった。それをきっかけに森山さんが関電につけ込み、金品を押しつけ、ずぶずぶと関係が深まった人がいた。やがておびえるようになった。金品をもらったから断れないと」

 地元には別の視点もある。元高浜町議は「関電が、森山氏を利用した」との見方を示す。「高浜3、4号を誘致する時、森山さんに地元を抑えてもらうことで、関電は(他の原発立地自治体に比べれば)『少ない金』で運転を開始することができたはず。ずっとお世話になって助けてもらって、今になって『どう喝された』って言ったって」と憤る。

 明通寺(小浜市)の住職で反原発運動を続けてきた中嶌哲演さんは、森山氏の「特異性」ばかりが強調されていることに違和感を覚えている。「関電が高浜原発をつくり、3、4号機増設を強行するその長い長いプロセスを通じて、関電と森山さんとの悪しき関係ができあがった。その間、よっぽど関電の方が、絶大な便益を得ている。関電が、森山さんをしゃぶり尽くしたんだ」

       ◇

 関西電力役員らが高浜町元助役・森山栄治氏から金品を受け取っていた問題は、報道による発覚から約一カ月。関電と森山氏との関係はどのようにできあがっていったのか。その背景にあったものは。原発立地自治体における「依存の構造」を探る。

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