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頭の体操や運動を推進 県内の認知症対策 

「心愛」では、工作や会話などを通じて、認知症の進行が緩やかになるよう取り組む。右手前は、利用者が作った作品=福井市渕3の認知症カフェ「心愛」で

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 政府が認知症の発症や進行を遅らせる「予防」に初めて重点を置いた新たな大綱を六月中旬に決定してから一カ月。運動不足の解消や人との交流が予防に効果的とされ、大綱では高齢者が体操や趣味を楽しむ「通いの場」の普及を打ち出した。県内の取り組みを追った。

◆老いにともなう病気

 認知症は、老いにともなう脳の病気。さまざまな原因で認知機能が低下し、記憶・判断力の障害、時間や場所、人物などを正しく認識できなくなる。

 認知症治療の専門病院「県立すこやかシルバー病院」(福井市)の伊藤達彦院長によると、(1)人との交流(2)有酸素運動(3)生活習慣病の予防−などが、症状の進行を遅らせる。「脳を刺激することが、認知機能の維持につながる。人と話すことは頭を使う。運動をすれば、血液や酸素の巡りが良くなる」と説明する。

◆県内にカフェ45カ所

 福井市渕三の認知症カフェ「心愛(ここあ)」では六月下旬、利用者らが黙々と折り紙を使った工作に励んでいた。別の利用者らは、ブロックを一本ずつ抜く「ジェンガ」に熱中。恐る恐るブロックを抜き、自分が成功すると笑顔を見せていた。

 運営する同院の高嶋康子看護部長は「みなさんは楽しみながら、脳を刺激する知的活動を行っている」と話す。毎週土曜日のカフェでは、毎回、簡単な体操で体も動かしている。

 スタッフが心掛けていることがある。「失敗しても責めないこと」(高嶋部長)だ。「物忘れが進んで不安を感じている人を、さらに傷つけてしまう。人との関わりを避けてしまうようになるかもしれない。心愛は、利用者が安心できる居場所でありたい」

 昨年から通う福井市の男性(77)は十年ほど前から一人暮らしをしており、普段、人と話をする機会がほとんどない。「ここに来れば、みんなと話せ、ゲームができる。楽しくて気が晴れる」と笑顔を見せる。県内では、四十五カ所(四月時点)で認知症カフェが開かれ、当事者や家族らの憩いの場となっている。

 県は二〇一七年三月、独自の「ふくい認知症予防メニュー」を作成。運動、頭の体操、歯と口の健康維持、バランスの良い食習慣を推進している。発症リスクを軽減する食材として、大豆製品や乳製品、緑黄色野菜などを挙げ、レシピも紹介している。

◆意識持つことが大事

 一方で、認知症を完治させる治療法や完全な予防法は見つかっていない。県によると、県内の高齢者は二十三万人で要介護認定者は四万人。このうち認知症の人は二万八千人で71%(一八年四月時点)を占める。

 伊藤院長は「自分は認知症にならないと思うのでなく、自分もなるかもしれないという意識を一人一人が持つことが大事」と話す。高齢者や家族に向け「自分や家族が、普段と違うと思ったら、医療機関や地域包括支援センターなどを利用することが大切。早めの気付きや対策が、症状の進行を緩やかにすることにつながる」と強調する。

◆取材後記

 認知症の予防法は、有酸素運動やバランスの良い食生活など、生活習慣病の予防にも通ずるものばかりだった。足腰の弱いお年寄りには、なかなかおっくうなことばかりだと思うが、県内には認知症カフェが四十五カ所ある。心愛の利用者たちのように、楽しく脳を刺激するのも良いだろう。

 伊藤達彦院長は「早めの気付きが大事」と指摘する。本人の努力には限界があるし、認知症の完全な予防法は見つかっていない。家族や近くの人たちが、高齢者を見守る環境づくりも大切だと思った。

 (山口育江)

 

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