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閉店危機の登山用品店、常連女性が救う 福井「遊山行」

太田文雄さん(右)、三枝子さん(中)夫妻から「遊山行」を引き継ぐ服部さん=福井市田原1の遊山行で

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 山小屋みたいなお店をなくしたくない−。県内の登山家に愛された福井市の登山用品店「遊山行(ゆさんこう)」。昨年、オーナー夫妻が病気を理由に店を閉じようとしたが、ある女性が引き継ぐことを願い出た。「この人なら」と店を託した夫妻。女性は「山の楽しみに出合える店にしたい」と意気込む。

 遊山行は神戸市出身の太田文雄さん(72)、三枝子さん(76)夫妻が一九九七年、福井市田原一にオープンさせた。店内には手書きした山のルート絵地図がずらり。パソコンの画面には次々と山の写真が映し出される。文雄さんがいれてくれるコーヒーも名物。常連客が山の話に花を咲かせる。

 昨年八月、夫妻はある決断をした。「お店、来月末でやめます」。三枝子さんにがんが見つかり、文雄さんは「看病に専念したい」と閉店を決めた。

 在庫一掃閉店セールの最中、複雑な心境でいたのが福井市の服部佐和子さん(46)だった。「この場がなくなるなんて、そんなの嫌」。思い詰める中で、ともに弁護士事務所を経営していた夫に相談した。「私が後を継いでもいい?」

 服部さんは兵庫県三木市出身。学生時代まで筋金入りの箱入り娘だった。結婚と同時に移り住んだ福井の地で、登山に出合った。初めての登山は二〇一三年冬。杉葉を踏む感触。山上から広がるパノラマの景色。その魅力に一気に引き込まれた。

 翌年春、初めて店を訪れた。ツアーに誘われるうち、どんどん体力も技術も上がっていった。元来、凝り性な性格。いつしか常連客と北アルプスの雪山をこなすまでに成長した。「このお店に出合ってなければ、こんなに楽しく山を登っていなかった」

 昨年九月、夫は「太田夫妻に聞いてみなよ」と勧めてくれた。夫妻の自宅玄関で服部さんは「私にやらせてください」と言ったきり、黙って泣いた。驚きつつも、服部さんの人柄を知る夫妻の心はすぐに決まったという。文雄さんが言葉を掛けた。「もうからへんで」

 今年四月、店は服部さんに引き継がれた。太田夫妻はできる限りサポートしていくつもりだ。文雄さんは「性根の据わったおなごさん。(店を継ぐ意思の)邪魔をしたらあかんと思ってね」とおどけて話す。三枝子さんも「途中で投げ出すことがない人。この人なら、と思った」と厚い信頼を寄せた。

 服部さんは女子登山部をつくるなど、活動の幅を広げている。初めての人でも登りやすいように。そんな心遣いが随所ににじむ。「私らしいお店、と気負わず自然にやりたい。まずは一年」。託されたバトンを手に、軽やかに走りだした。

 服部さんはツイッターやインスタグラムで情報発信している。「遊山行」で検索。

 (藤共生)

 

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