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「私も苦学生」奨学金で応援 岐阜の弁護士が1億円基金

「伸びる力がある人のチャンスをつぶしてはいけない」と語る広瀬英雄さん=岐阜市の広瀬法律事務所で

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 岐阜市天神町の弁護士広瀬英雄さん(78)が、約二十年間コツコツとためてきた私財一億円を投じ、大学進学を目指す若者を対象に給付型の奨学金基金を設立した。幼い頃に両親を亡くし「村一番の貧乏」から、苦学し弁護士資格を取得した広瀬さん。「自分の若い頃と同じような境遇の子どもたちに、活躍のチャンスが広がれば」と強く願う。

 広瀬さんは、岐阜県の旧・生津(なまづ)村(現・北方町)出身。農家に生まれたが、小学二年の時に両親を相次いで病気で亡くした。当時の一家は祖父母と姉二人、妹の六人暮らし。広瀬さんは新聞配達で家計を助けた。

 衣服は親類のお下がりが多かった。食事はコメを口にすることはほとんどなかったという。三つ年下の妹に、小学校の教材費で必要な少額のお金を渡せず、心苦しい時があったことを覚えている。

 貧困から高校進学が危ぶまれたが、当時の北方町長の勧めで役場で働きながら、夜は旧・本巣高校の定時制に通って勉強を続けた。実家の稲作も手伝っており、農繁期は農作業の後、疲れ果てて足の泥をぬぐわないまま寝入った日もあったという。

 高校卒業前に国家公務員初級試験に合格し、最初に働き始めたのが岐阜労働基準監督署。夜は大学に通い、行き帰りの電車の中では民法や商法の書籍を読みあさった。「娯楽が少ないのもあったが、貧しいから勉強するしかなかった。いつしか勉強が癖のようになっていた」と振り返る。やがて、難関とされる国家公務員上級試験に合格した。

 大学を卒業した一九六四年から労働省(現・厚生労働省)で働き始めたが、「法律の勉強がきっかけで司法試験に関心を抱いた。金のない人のための弁護士が必要では」と弁護士を志すようになった。夜間大学で学び、司法試験に合格。七〇年に弁護士となった。

 岐阜県弁護士会に所属し、暴力団の民事介入に抵抗するなど、暴力追放の活動に力を入れた。八九年度には県弁護士会長も務めた。「法律は常識に基づいたものが多い。判決が一般の感覚からずれた場合は解釈が間違っている」が信念で、粘り強い活動を後輩らに説いた。

 奨学金による若者支援は二十年余前に思い立ち、貯蓄してきた。「友人が地元に老人ホームを建設したのを知り、自分も故郷のために何かしたいと思っていた。経済格差のニュースをよく見聞きし、意欲や能力があってこれから伸びるはずの若者のために何かできないかを考えてきた」

 今年七月、運営のための一般財団法人を設立。対象は経済的な理由で大学進学が難しい成績優秀な生徒とし、二〇二〇年四月から給付を開始。月額五万円を四年間支給し、返還の必要はない。毎年五人ずつ給付を続ける方針で、県内の高校五校に推薦を依頼した。

 「広瀬英雄奨学金基金」についての問い合わせは、広瀬法律事務所=058(262)6847=へ。

◆貸与型多く…受給率減少傾向 18年調査30%

 全国大学生協連(東京)の2018年の学生生活実態調査(30大学、約1万1000人対象)によると、奨学金を受給する学生の割合は30.5%。ピークだった11年の37.9%から7年連続で減った。

 調査担当者は「日本の奨学金は返済が必要な貸与型が多く、奨学金は子どもが返す借金という認識が保護者に広がった。アルバイトで生活費をまかなう学生が増えている」と受給率が下がった原因を推測する。

 貸与型の受給者に返済について聞くと、不安を感じると答えた人は74.4%に上った。

 こうした状況を受け、日本でも返済の必要がない給付型の奨学金を拡充する動きが相次いでいる。

 日本学生支援機構(JASSO)は17年度、住民税非課税世帯などを対象に給付型を開始。20年度から対象世帯を広げる。事故や病気などで親を亡くした子を支援する「あしなが育英会」(東京)は18年度、貸与型の奨学金に返済不要な月額2万〜4万円を上乗せする制度を始めた。

 (藤原啓嗣)

 

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