トップ > 一面 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

一面

元稲沢市議、無期判決 中国・麻薬事件、即時上訴の方針

桜木琢磨被告

写真

 【広州=浅井正智】中国国内で覚醒剤を国外に運ぼうとしたとして麻薬密輸罪に問われ、「懲役十五年以上か無期懲役または死刑」を求刑された愛知県の元稲沢市議、桜木琢磨被告(76)に対する判決公判が八日午前、広東省の広州市中級人民法院(地裁)で開かれ、無期懲役が言い渡された。弁護人はただちに上訴する方針を明らかにした。

 桜木被告は二〇一三年十月三十一日、広州市の白雲国際空港で、スーツケースに入った覚醒剤三・三キロを違法に運搬しようとしたとして拘束された。

 被告は、荷物の運搬を依頼した旧知のナイジェリア人にだまされ、「中に覚醒剤が入っているとは知らなかった」と一貫して無罪を主張。検察側は「知っていた」として法定刑と同じ求刑をした。

 法院は「事件が重大かつ複雑で、証拠を確認する必要がある」との理由で、これまで二十回にわたり判決を延期してきた。結局、法院は被告が荷物の中身を「明らかに知っていた」と検察の主張を認定。無期懲役とした量刑判断に大きく影響したとみられる。

 起訴当時の罪名は「麻薬運搬罪」だったが、桜木被告が最終的に日本に覚醒剤を持ち出そうとしたとして、判決公判当日になって罪名が突然、「麻薬密輸罪」の未遂に変更された。弁護人によると、この二つの罪の量刑に違いはないという。

 八日の判決公判では、共犯とされたマリ人とギニア人に対しても、それぞれ執行猶予二年付きの死刑判決と無期懲役が言い渡された。

◆結審から5年 立証不十分

 <解説> 結審してから五年以上も法的根拠を示されないまま勾留されていた桜木琢磨被告に、無期懲役が言い渡された。七十五歳以上の高齢者には原則的に死刑を適用しない中国刑法の規定に加え、麻薬密輸罪が未遂であったことも考慮され、極刑こそ回避された。しかし高齢の被告にとって、無期懲役は出所を許さない厳しい判決と言え、薬物犯罪に対しては妥協しない中国の姿勢を見せつけた。

 桜木被告は捜査段階から、スーツケースに「覚醒剤があったことは知らなかった」と主張したが、判決は「明らかに知っていた」と検察側の主張を認めた。二〇一四年八月に三日連続で開かれた審理で、検察側がこの点を立証したとは言い難く、弁護人によると判決でも新証拠は示されていない。法院の認定は結論ありきの可能性も否定できない。

 中国は十九世紀、英国が密輸するアヘンを厳禁した結果、英国と「アヘン戦争」となり敗北。それ以降、列強に国土を踏みにじられた歴史がある。このため薬物犯罪の最高刑に死刑を科すなど厳しい態度で臨んでいる。

 外国人も例外ではなく、一〇年に麻薬密輸罪で日本人四人が日中国交正常化(一九七二年)以降、初めて死刑が執行されたほか、二〇一四年と一五年にも、それぞれ日本人が一人ずつ死刑に処せられた。

 桜木被告への判決は、過度とも言える薬物犯罪への厳罰化の中で下された。日本の元公職者である被告を軽い処罰で済ませた場合、国内の反発を招きかねない。政治の意向を強く受けたとみられる判決は、「司法の独立」が保障されない中国式法治のゆがみも映し出している。

 (広州・浅井正智)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索