トップ > 一面 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

一面

ぬれた本を救い出せ 台風19号、図書館も被害深刻

台風19号で水没した東京都市大学の図書館=23日、東京都世田谷区で(松崎浩一撮影)

写真

 東日本を直撃した台風19号は、少なくとも東京、千葉、静岡など十三都県の八十六公立図書館と十四大学図書館に甚大な被害をもたらしたことが、文部科学省などへの取材で分かった。同省にまだ報告がない長野県内でも複数の館が被害に。十二日の上陸以降、書庫が水没したり、雨漏りで本がぬれたりした現場で、職員らによる不休の復旧作業が続く。

 「一週間も水に漬かってしまった。本を助けたいけど…」。泥と消毒液の臭いが立ち込める東京都市大(世田谷区)の図書館で、スタッフらがかびた本の整理や清掃をする。蔵書二十九万冊のうち九万冊を置く書庫を含めた地下が水没し、一階も足首まで水に漬かった。

 千曲川の堤防決壊で大きな被害が出た長野市では、図書館分室のうち二カ所が浸水した。豊野公民館では一階が五十〜六十センチ浸水。ロビーに並べていた書籍の四分の一にあたる千冊が水をかぶった。堤防決壊現場となった穂保(ほやす)地区の長沼交流センターでも書籍の大半がぬれてしまった。

 長野県千曲市の市立更埴(こうしょく)図書館でも一階の書籍がぬれ、貴重な本は乾かしたり、クリーニングに出したりして修復を進めている。

 国立大学図書館協会によると、東京大(文京区)、東北大(仙台市)、富山大(富山市)などでも雨漏りや建物の一部が破損した。

 一方で、栃木県小山市の白鴎(はくおう)大総合図書館分館は、地下が約四十センチ、一階が約三センチ浸水したが、図書の被害はなかった。四年前の台風では、地下の書庫で貴重な本を含む約五万冊が浸水。そこで地下にはできるだけ本を置かず、学習スペースを整備。台風19号時には、避難所だった同大にいた学生約百人が、自主的に地下と一階の書籍約二万冊、電子黒板、パソコンなどを二階へ移した。

 災害で被災した資料の保全に取り組む筑波大の白井哲哉教授(歴史学)は「地下書庫は、外気の温湿度の変動による本の劣化を防ぐため珍しくないが、地上でも二重壁や空調で対応できる」と指摘。棚の下段に本を置かない、貴重本は別の場所に保管するといった対処法もあると呼び掛ける。

◆復元マニュアル公開 都図書館

(左)東日本大震災の被災地で津波をかぶった本 (右)洗浄後に乾燥させて復元した本

写真

 水害でぬれた本はどのように復元するのか−。東京都立図書館は泥にまみれた資料を洗って復元させる「救済マニュアル」をホームページや動画配信サイトのユーチューブに公開している。

 同館によると、紙はぬれると早くて四十八時間でカビが発生する。このため復元の決め手は、いかに早く紙を乾燥させるかだ。和紙は水に強く、古文書などは泥水にぬれても吸水紙などを挟んで丁寧に乾燥させれば、ある程度は戻せる。

 明治期以降の資料に使われている塗工紙は、乾くとページ同士が固着してはがれにくくなる。二〇一一年の東日本大震災を受け、同館は復元方法を模索し、汚水が固着の要因と突き止めた。本を真水で洗って乾燥させる方法を一三年度にマニュアル化。洗浄を待つ本は冷凍保存しておけば、カビの発生を抑えられる。

 貴重な本の復元には、資料を凍らせ専用の機械で水分を気体にする「真空凍結乾燥法」も用いられている。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索