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子育てママを応援する「with mama」

<ママ’sボイス> 何度でも縁を紡ぐ場に

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  名古屋市のミシンメーカーやまちづくりに取り組むNPO法人で働き、二〇一一年、結婚を機に桑名市に移り住んだ。しばらくは名古屋まで通勤し、桑名は「寝に帰る場所」。ところが、一三年に長男を出産し、遠出が難しくなった。

 行くところがなくて、ショッピングセンターや街中をベビーカーを押して「徘徊(はいかい)」していました。息子が一歳になったころ、自宅の近くにある善西寺の住職さんと知り合い、一六年ごろから、寺でやっている子ども食堂に呼ばれるようになって。そこで近所の檀家(だんか)さんと知り合い、一緒にご飯を食べる仲になりました。

  前職でまちづくりに関わっていたこともあり、寺の催しを手伝うようになった。寺の門前町である西矢田町は、多くの人でにぎわう桑名駅前や郊外の大型商業施設からは少し離れているが、旧東海道沿いの風情が残る街。歴史や人にふれ、次第に心が引かれた。空き店舗などの活用が増えれば楽しいのにと考えたが、子育てで身動きがとれず、街にどう関わるべきか悩んだ。

 あるとき、「考えているだけでは人生終わるな」と思ったんです。駅前なら誰かしらやるだろうけど、この街にはいない。最初に思い付いた人がやらないかんのだなと。私が今持っているリソース(手段)で、小さくてもいいからできることってなんだろうと考えたときに、古着屋さんを思い付いたんです。

  もともと古着や雑貨は好きだった。ただ、買って帰るだけではその場限りの関係で終わってしまう。そこで街を面白くするためにと考え出したのが、古着のレンタルだった。年間三千円で何回でも古着が交換できる仕組みだ。店は、寺の催しで知り合った坂本都始子(としこ)さん(86)が長年営んだ餅店「福餅」の空き店舗を借りた。看板は残し、店名にも生かした。

 街を面白くするには仲間を増やさないといけない。店に通ってもらえば関係性もつくりやすいと思ったんです。最初は服だけだけど、通ううちに街に親しみがわいて、桑名で子育てするならこの辺にしようと思う人がいてくれたらいいなと。

  とはいえ、街との関係を重視することや子育て世代であることを前面に出しているわけではない。あくまで「ただの古着店」。洋服を中心に、多様な人が集まればいいと考えている。

 私自身、属性別のコミュニティーってあまり好きじゃないんです。子育て支援施設にも行きましたが、「ママ同士」というだけではなかなか仲良くなれなくて、なじめませんでした。私のようにママというつながりだけでは居心地が悪い人もいるのでは。私は、ママとか、年配者とかだけじゃなくて、服とか食とか多様な切り口の出会いの場がある街こそ、豊かなのではないかなと思っています。

  昨年七月に開業し、今では中高生から七十代まで幅広い年代の客が訪れる。今後は店内での作品展やワークショップも企画。街の魅力を伝える地図作りにも仲間と着手している。不動産業も視野に入れている。

 この街で何かやろうと思ったのも、出産で一気に生活に制限がかかったからこそ。名古屋にいたらそうは思わなかった。子育てでやりたいことができないと感じる人もいるだろうけど、私の場合は発想を転換して「だったら周りをどうにかしよう」と。そういうこともありえるのではないかと思います。

◆今回の読みどころ

 店に通ってもらう中で、さまざまなつながりが生まれたら。「レンタル古着」というアイデアには、そのような生駒さんの思いが込められていました。

 <いこま・いくよ> 1977年生まれ。愛知県安城市出身。夫(40)、長男(5)、次男(1)の4人暮らし。

(文・熊崎未奈 デザイン・伊藤亜美 紙面構成・望月海希)

※次回は10月25日です

 

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