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知るコレ!

市民のため 素早く対応 「すぐやる課」 発足50年

6月には「道路をカメが歩いている」との通報を受けて巨大なリクガメを捕獲

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 千葉県の松戸市役所には「すぐやる課」という変わった名前の部署があります。役所の部署は「観光課」や「保育課」など担当する分野が名前になっていますが、すぐやる課は「困り事に素早く対応する」という姿勢に由来し、今年で発足50周年。一時ブームとなり、最盛期には300を超える自治体がまねをして同じような部署をつくりました。

◇組織や分野の縦割り超える

 「道路にネコの死骸があるので、何とかしてほしい」。11月下旬、すぐやる課に電話がかかってくると、作業車で市内を見回っていた職員が現場に向かって回収。その日のうちに、ごみ処理施設へ運び込みました。

 道路に動物の死骸があって困った時の連絡先は、住んでいる市区町村によってさまざま。国道なら国、県道なら県という具合に、道路の種類によっても処分する組織が異なる場合も。面倒なこともありますが、松戸市ではすぐやる課が窓口に。石原稔課長(52)は「『市民の味方』『早くて助かる』と言ってもらえるのがやりがいです」。

 すぐやる課ができたのは、日本が高度経済成長に沸く1969年。就職や進学で人が首都圏に吸い寄せられ、東京の隣の松戸市もベッドタウンとして毎年1万人超のペースで人口が急増。市役所へ寄せられる要望が多様化する中、住民の満足感を高めようと創設されました。

 物事を決めるのに、いくつもの部署の了解を得るため時間がかかる「縦割り行政」を変える狙いもありました。“お堅い”イメージの役所らしからぬ名前に反対もありましたが、「小学生にも分かるのが望ましい」と当時の市長が押し切ったそうです。

 もちろん、何でもしてくれるわけではありません。

 まずは、限られた人だけでなく、多くの人の生活向上につながるかを判断。最も多いのはハチの巣の駆除で、夏から秋にかけてのピークには1日に30件もこなします。道路に開いた穴は、小規模なら業者に頼まずに職員が修繕。台風で「側溝から水があふれている」と通報があれば、側溝のふたを外して詰まった泥をかきだします。要望を受けてから、遅くとも翌日までに応じるのが原則。昨年度は2746件に対応しました。

 一方で、過去には「娘の結婚相手を探して」「テレビを直してほしい」との要望もありましたが、「個人的な問題」ということで応じられないそうです。

 高齢化を受けて今年4月からは、認知症などのお年寄りが行方不明になった際の「探索パトロール」も開始。石原課長は「時代の求めに応じながら市民の生活を支えたい」と話します。

◇商売人の精神 元市長が発案

 すぐやる課を発案した市長は松本清さん(1909〜73年)です。どこかで耳にしたことはありませんか?全国展開しているドラッグストア「マツモトキヨシ」と同じですね。実は“マツキヨ”の創業者でもあります。

 松本元市長は、商売人と政治家の2つの顔があります。32年に松戸市内に個人商店「松本薬舗」をオープン。51年にマツモトキヨシに名前を変え、各地に店舗を広げました。

 一方、47年に初当選した千葉県議を22年間務め、69年に松戸市長に就任。「私は松戸株式会社の社長。職員諸君は、市民のみなさんをお客さまと呼ぶように」、「すぐにやっていくという精神を行政の中に取り入れる」といった発言は、いかにも商売人らさしさを感じさせます。

 アイデアマンの松本元市長が生み出したすぐやる課はブームとなり、75年には315の自治体が同じような部署を設置。昔と比べて住民の要望に手早く応える態勢が整った最近は廃止される傾向ですが、今も東京都葛飾区、静岡県島田市などに残ります。

 (諏訪慧)

道路に開いた穴を埋めて直す職員=いずれも千葉県松戸市役所提供

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