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知るコレ!

できた!涙が出ない品種 進化系タマネギ

紫タマネギ「さらさらレッド」の特徴について話す岡跡本大作社長=北海道栗山町で

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 実りの秋。今回はカレーやスープなどの料理に欠かせないタマネギの話題です。包丁で切ると、毎度泣かされますね。そんな悩みを解決してくれる、涙の出ない「進化系タマネギ」が注目されています。産地の北海道を訪ねました。

 千歳市の新千歳空港から車で約45分。人口1万1700人ほどの栗山町で8月、タマネギ畑の見学会がありました。葉が横倒しになり、収穫を待つタマネギがごろごろ。カレーのルーなどを作る「ハウス食品」が開発した涙の出ないタマネギ「スマイルボール」です。全国で唯一、栗山町で栽培されています。

 一帯は、かつて一級河川・夕張川の河川敷でした。堆積物でできた沖積土と呼ばれる豊かな土壌と、涼しく乾燥した気候がタマネギの栽培に適しています。同町でタマネギの品種改良に取り組み、スマイルボールの開発にも携わる植物育種研究所の岡本大作社長は「葉の表面が枯れてきたら、養分がタマネギに入った合図です」と収穫のタイミングを教えてくれました。

 ハウス食品は最初から、涙の出ないタマネギを開発しようとして研究を始めたわけではありません。タマネギとニンニクを炒めた時に緑色に変色する現象が起き、原因究明に乗り出したのがきっかけでした。

 研究開発本部の今井真介さんを中心に、タマネギの細胞に含まれる酵素の働きを分析。すると、タマネギを切って細胞が壊れると、細胞内のアミノ酸や酵素が反応して、涙を出す成分が作られる本当のメカニズムが分かったのです。つまり、涙を出す成分は、もともとタマネギに含まれているわけではありませんでした。

(上)涙の出ないタマネギ「スマイルボール」、(下)ケルセチンの量が多い「さらさらレッド」

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 仕組みが分かったことから、今井さんらは「涙が出ないタマネギも作れるのではないか」と1万個のタマネギを調査。原因となる酵素が少なく、涙を出す成分を生む反応が進まないタマネギを見つけて育種し、2015年、スマイルボールの名で商品化しました。

 涙を出す成分は辛みを感じる成分でもあるため、「生で食べても辛みをほとんど感じず、甘いのも特徴です」と新規事業開発部の正村典也課長は紹介します。11月から、東海地方のスーパーにも並びます。

 岡本社長は、スマイルボールに先立つ2005年、健康維持に役立つ成分を多く含んだ「さらさらレッド」という紫タマネギを開発しています。これらの品種を「機能性農産物」と呼び、一般的なタマネギと差別化し、PRしてきました。

 タマネギの出荷量は全国で年約110万トンで、約68%が北海道産。最大の産地は道東の北見市で年約21万4000トン、栗山町は年1万1000トンと量では太刀打ちできません。

 そこで、岡本社長は形がそろっているか、病気に強いかなどを重視してきた生産者目線の品種改良をやめ、「消費者が求める健康機能とおいしさにこだわり、他にはない品種を作りたい」と、機能性タマネギの育種を始めました。

 岡本社長は、赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種、ケルセチンの量が、タマネギの品種によって異なることを解明。交配を重ね、ケルセチンが1.5〜3倍多く含まれるさらさらレッドを作り出しました。ケルセチンは高血圧や生活習慣病の予防に効果があるといわれています。

 岡本社長の思いは生産者にも受け継がれています。機能性タマネギを栽培する栗山町の生産組合は、平均年齢42歳と若手が中心。「子どもたちに胸を張れるタマネギを作りたい」との思いで日夜、工夫を重ねています。

(福沢英里)

 

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