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知るコレ!

LEDで栽培収穫安定 植物工場

LEDライトの光を浴びて育つレタス=福井県小浜市の小浜植物工場グリーンランド

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 食卓に並ぶ野菜がどこで育ったものか、考えたことがありますか。「畑でしょ」と答える人が多いと思いますが、畑以外で野菜を育てているところもあります。太陽の光も土もない室内で栽培する「植物工場」。一体、どのように作られているのでしょうか。(大沢悠)

 福井県小浜市の「小浜植物工場グリーンランド」。中に入ると、窓一つない閉ざされた室内に、高さ五メートルほどの栽培棚が並んでいます。発光ダイオード(LED)の光を浴びたレタスの葉が広がっている様子は、まるで実験室のようです。

 レタスの根っこは土中ではなく、発泡スチロールに開けられた穴へと延び、栄養を含んだ液体に漬かっています。担当の秋川淳之介さん(35)によると、毎日三千粒以上の種をまき、四十二日目に収穫します。「毎日六百キロほどのレタスが安定して取れます」と秋川さん。工業製品のように管理しているため、収穫できる量も決まっているのです。

 取れたレタスは、東京都の豊洲市場や、名古屋市のデパートなどに出荷されます。秋川さんは「みなさんも気付かないうちに植物工場のレタスを食べていると思います」と話します。

 この植物工場は、スーパーマーケットなどを展開する木田屋商店(千葉県)が二〇一八年に建設。主にレタスを生産し、別の工場ではバジルなども栽培しています。トマトやイチゴなど実がなる野菜や果物は、多くの光量が必要になるため、葉もの野菜に比べて育てるのが難しいそうです。

 「トコトンやさしい植物工場の本」を書いた社会開発研究センター(東京)の石原隆司さん(53)は、植物工場は大きく分けて二つあると説明します。閉鎖的な空間で、太陽光を使わず植物を育てる「完全人工光型」と、温室などで基本は太陽光を利用し、曇りや雨の場合に人工的な光を利用する「太陽光利用型」です。石原さんは「完全人工光型の植物工場が増えてきています。設備投資に費用はかかりますが、農薬を使わなくてすみ、清潔に栽培できるなどのメリットがあります」と説明します。

 「完全人工光型」の植物工場では、驚くほど多くのレタスを生産できます。化学工業メーカーの昭和電工で植物工場を担当する鈴木広志さんと相原沙紀さんが、露地栽培と比べた一年間の収穫量を教えてくれました。

 千平方メートルあたりで比べると、露地栽培が五.六トンなのに対し、植物工場では百四十六トン。二十五倍以上の開きがありました。

 このように差が出るのは、なぜでしょうか。ポイントは「光」にあります。

 昭和電工の植物工場では、生育に適している六百六十ナノメートルの波長の赤い光をLEDライトで集中して照らします。二〇〇九年には、少ない電力でより明るく光らせる技術を開発し、特許を取得。さらに、赤色LEDと青色LEDの光を交互に当てると、植物の生育が促されることを発見し、この現象を生かした栽培方法を確立しました。

 天候に左右される露地栽培に比べ、生育に適した光を安定して当てられることが影響しているようです。この手法は注目を集め、国内外の六十五カ所で導入されています。

 鈴木さんは「地球温暖化が進んで野菜が取れない地域が増える可能性があるが、植物工場なら安全なものを安定的に栽培できる」。相原さんも将来の食料危機を見据え、「植物工場が課題を解決する一つの手だてになるのではないでしょうか」と話しています。

 レタスの植物工場を建設する企業は増えています。東京電力エナジーパートナーなどは来春、静岡県で操業を予定。九州電力も今月、二一年度に国内最大規模の植物工場を建設する計画を発表しました。

 今後は、トマトやイチゴの育苗などへの応用も考えられています。いつの日か、砂漠や寒冷地など厳しい環境でも、みずみずしい野菜や果物が実る植物工場が登場するかもしれません。

 

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