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知るコレ!

おいしさ長持ち常に備蓄 ロングライフパン

棚にずらりと並ぶロングライフパン=名古屋市西区のヨシヅヤ名古屋名西店で

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一見すると、普通のパンと同じですが、ロングライフパンの賞味期間は1カ月以上に及びます。保存料は無添加なのに、一般的なパンの2〜3日と比べて圧倒的な長さです。今日は防災の日。非常食として使える食品を日常的に食べては補充を繰り返し、常に備蓄食がある状態にする「ローリングストック」用としても注目されています。 (諏訪慧)

◇「パネトーネ種」酵母使用

 名古屋市西区のスーパー「ヨシヅヤ名古屋名西店」。専用の棚には、ロングライフパンがずらりと並びます。クロワッサンが三十五日、クリームやチョコが入ったデニッシュパンは六十日と、賞味期間の長さにびっくりします。

 長持ちの秘訣は何でしょうか。保存料かと思いきや、ロングライフパンを専門に作る「コモ」(愛知県小牧市)によると、カギは材料にありました。

 一般的なパンは酵母を使って生地を膨らませますが、コモでは酵母や乳酸菌を含む「パネトーネ種」を用います。乳酸菌は、糖分を分解して乳酸や酢酸などを発生させ、酸性度を高める作用があります。

 水分が少ないのも特徴です。一般的なパンの水分量は40%ほどですが、パネトーネ種で作ったクロワッサンは20%ほど。酸性度が高く、水分が少ないことにより、カビが生えたり、腐ったりするのを防ぐ仕組みになっているのです。

 肝心の味は、水分が少ないにもかかわらず、しっとりさと口どけの良さがあり、ほのかな酸味を感じます。

 コモは一九八四年の創業と同時にロングライフパンの製造と販売を始めましたが、「初めは扱ってくれるお店が少なかった」と木下克己社長(72)は話します。理由は価格でした。

 生地を膨らませるのに時間がかかるため、通常のパンより製造時間が長くなります。パネトーネ種の保管には専用の部屋も必要です。このような理由で、価格は通常より数十円高くなり、デニッシュパンのシリーズは一個百四十円ほどです。

 木下社長によると、広まるきっかけの一つは食料品の宅配を展開する各地域の生協が取り扱ってくれたこと。宅配は毎日買い物に行けない人の利用が多く、賞味期間の長さが重宝されたそうです。

 さらに注目を浴びたのが九五年の阪神大震災や、二〇一一年の東日本大震災の時。「備蓄食の賞味期間が過ぎる前に食べ、その分を買い足す」ことを意味するローリングストックをする家庭が増えました。

 ロングライフパンは、長い賞味期間が過ぎる直前でもおいしく食べられます。乾パンなどとは違って、日常の食卓でも消費しやすいことから、需要が高まりました。

 最近は食品の大量廃棄が問題となり、スーパーの取り扱いが増えています。一カ月当たりの出荷数は昨年より約6%増の七百七十九万個。別のメーカーもパネトーネ種を使ったパンの製造を手掛けるなど広まっています。

◇イタリアの伝統的食文化

 日本ではクリームを塗ったスポンジにイチゴなどを飾り付けたものが定番のクリスマスケーキ。イタリアでは、ロングライフパンに用いるパネトーネ種を使ったケーキを食べるのが習慣です。

 その名もパネトーネ。イタリア北部の都市ミラノ出身のイタリア語講師イバン・ビガノさん(56)=名古屋市在住=によると、クリーム入りもありますが、レーズンなどのドライフルーツが入っているのが伝統的。子どもからお年寄りまでみんな大好きで、イタリア全土で売られています。

 日本で暮らす今も、ミラノにいる母親が毎年冬に送ってくれるそうです。ロングライフパンと同じように賞味期間は長いですが、「おいしいからすぐ食べてなくなっちゃう」と、備蓄食ではないそうです。

 故郷の名物に使われるパネトーネ種が災害の多い日本で重宝されているのを知り、「うれしいね。イタリアの食文化がもっと広まるといいな」とビガノさんは話しています。

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