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知るコレ!

実は短命じゃなかった!? セミの寿命

ポスター発表で最優秀賞に輝いた植松さん=岡山県笠岡市の笠岡高で

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 夏の風物詩、セミ。今年もあちこちで鳴く姿が見られるようになりました。成虫は短命で「1週間しか生きられない」という説が広く知られていますが、岡山県の高校生が独自に調べたところ、最長で1カ月以上生きたセミが。私たちが思う以上に、長生きなのかもしれません。 (諏訪慧)

 調査したのは岡山県笠岡市の県立笠岡高校3年の植松蒼さん(18)。生き物が好きで、小学生のころから夏休みの自由研究などでセミの生態を調べてきました。高校ではサイエンス部に所属しています。

 寿命に関心を抱いたのは2015年の夏。きっかけは、セミが鳴き始めて1週間ほどたったある日、地面に落ちている死骸を目にしたことでした。「寿命が1週間だとしたら、1週間前に鳴いていた数と比べて死骸の数が少ないのでは」と疑問を感じたそうです。

 そこで翌16年の7月21日から9月12日にかけ、調査を開始。公園や神社の境内など10カ所近くで捕獲して油性ペンで羽に番号を記して放し、再捕獲に挑みました。

 クマゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミの計863匹を捕獲。このうちニイニイゼミを除く3種の15匹を再び捕まえ、さらに4匹を再々捕獲して生存期間を記録しました。すると2回以上捕まえた15匹のうち、6匹で2週間以上の生存を確認。各種の最長はアブラゼミが32日間、ツクツクボウシが26日間、クマゼミが15日間でした。最初に捕まえた時点で幼虫から羽化してしばらくたっていたり、野に放った後にさらに生きたりしたことも考えられ、実際の寿命はもっと長い可能性があります。

 「1カ月以上も生きていたのには驚いた」と植松さん。再捕獲できた数が少なく、「例外的に長生きのセミを捕まえただけかも」とも話しますが、セミに詳しい京都大大学院の沼田英治教授(動物生理学)は「実は専門家のあいだでは、1週間よりは長生きだろうと考えられてきました」。

 ただ自然の中でどれだけ生きるかをデータに基づいて明らかにした研究は「少なくとも目にしたことがない」と言い、「寿命に関して強い根拠は持っていませんでした。それゆえ、植松さんの調査は価値が高いと思います」と評価します。

 実際、広島大で5月にあった「中国四国地区生物系三学会合同大会」で調査結果を報告すると、「高校生ポスター発表(動物分野)」部門で最優秀賞に。植松さんは「自然は楽しい。ちょっとした疑問を行動に移すと、面白い発見ができるかも」と呼び掛けます。

 セミは「はかなさ」の象徴として昔から文学に登場します。「はかない」とは「不確か」「むなしい」などの意味。よく用いられるのは、セミや抜け殻を意味する「空●」という表現です。例えば平安時代に書かれた小説「源氏物語」には、まさに「空●」という巻があります。ある女性を好きになって家をこっそり訪ねた主人公の光源氏が、感づかれた女性に逃げられてしまいます。その時、部屋に残された薄い着物をセミの抜け殻になぞらえ、かなわない恋心を和歌に託しました。

 「古典基礎語辞典」(角川学芸出版)によると、空●は奈良時代に編まれた日本最古の歌集「万葉集」にも登場。もともと「現し臣」と書き、「この世の人」などの意味でしたが、「うつそみ」とつづまり、「空●」と当て字されるようになったそうです。

 セミの寿命が1週間と言われるようになった理由ははっきりしませんが、1200年以上前からはかなさの象徴とされてきたことが、短命と思われている理由の一つと言えそうです。

※●は蝉の旧字体

 

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