トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

五輪・パラリンピック 飲食戦略

持続可能性を初めて打ち出した2012年のロンドン大会の選手村食堂

写真

 2020年の東京五輪・パラリンピックは2万5000人以上の選手と1000万人以上の観客が訪れると予想され、経済や社会、環境に大きな影響をもたらすと考えられています。その中で、国際オリンピック委員会(IOC)が掲げる一つのキーワードが「持続可能性」。飲食の分野でも取り組まれます。(大沢悠)

 「基準があるのはいいことだと思う。生産者も、より責任を持って農産物を提供できる」。岐阜県池田町でトマトを育てる「細野ファーム」オーナーの細野晃大さん(24)は、この春、岐阜県が認める「岐阜県GAP」を取りました。東京五輪・パラリンピックの選手村などで提供される食事に使われる農産物は、GAPの認証を受けていることなどの基準が設けられています。細野さんは大会で、自分が育てたトマトを使ってもらうことを考えています。

 GAP(Good Agricultural Practice)とは、農業生産工程管理といって、農産物が安全なだけでなく、生産過程で環境に気を配り、作り手の人権が守られていることなどがきちんと確認された農場に与えられる認証です。日本GAP協会が認証する「JGAP」や、国際規格の「ASIAGAP」などがあります。農林水産省のガイドラインに基づいて都道府県などが認証するGAPもあり、岐阜県GAPはその一つです。

 このような飲食に関わる基本的な考えは「東京2020大会における飲食提供に係る基本戦略」にまとめられています。大会組織委員会が選んだ元スポーツ選手や大学教授らでつくる飲食戦略検討会議で話し合われ、昨年3月に完成しました。「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」の三つが考え方の柱です。

 持続可能性、つまり、未来も続けていけるようにする配慮としては、ほかにも再利用できる食器の使用や、食品廃棄物を抑える取り組みなどが考えられています。ただ、日本の農産物を使おうとしてもGAP認証は費用や手間がかかるなどの理由から、取得している農場はさほど多くありません。水産物では資源管理、食肉用などの動物では飼育方法が適切に行われているかなどを見極めることも課題です。

 飲食についての戦略は12年のロンドン大会で初めて策定されました。背景には地球規模で進む環境問題があり、次の世代へ続く持続可能性が注目されるようになったのです。

 持続可能性は、「もったいない」と食材を使い切る和食の精神にもつながります。東京大会では、そうした考え方を含めて日本の食をPRする機会もつくります。1日に最大4万5000食を提供する選手村の「メインダイニング」や、3000食規模の「カジュアルダイニング」では日本の食のコーナーを設ける予定です。特にカジュアルダイニングでは、和食や地域の特産物を使った食事を出す考えです。

 1964年の前回大会の時は、日本は高度経済成長期の真っただ中。人口は増え続け、戦後約20年にして国内総生産(GDP)は世界5位に躍り出ていました。

 会議の座長を務めた元実践女子大教授の大久保洋子さん(76)は前回と今大会を比べ、こう話します。「前回は物質的に豊かになっていった時期で、五輪が電化製品の流通や、冷凍食品の一般家庭への広がりを後押ししました。今回は、持続可能性という視点から、精神的、文化的な豊かさを考える機会になるのではないでしょうか」

 一時的な盛り上がりがあればいいわけではありません。「生産者も観客も、一人一人が持続可能な仕組みについて考え行動するようになれば、それは東京大会のレガシー(遺産)になります」と話します。

写真
 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索