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知るコレ!

体と機械が一体化!? 超人類

背中側から伸びるロボットアーム「MetaLimbs」=東京都目黒区の東京大先端科学技術研究センターで

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 有史以来、人間は道具を作り、使いこなしてきました。眼鏡は視覚を、自動車は移動を、スマートフォンは記憶や意思疎通を、それまでの人間ができなかったレベルに押し上げました。その延長で人体と科学技術を組み合わせ、「超人類」へと進化しようとする試みが、世界各地で研究、実践されています。(宮崎厚志)

 1日、東京大先端科学技術研究センター(東京都目黒区)の研究室が公開され、多くの人でにぎわっていました。来場者はいろいろな装置を体に取り付けます。すると、背中側から機械の腕が伸びて滑らかに動いている人がいました。思わずギョッとして立ち止まります。

 この腕は、慶応大と共同開発した「MetaLimbs」と名付けられたロボットアーム。足に着けたセンサーに連動し、慣れれば自分の腕のように使うことができるそうです。その姿はまるで6本の腕を持つ仏像・阿修羅像です。

 「拡大+指」を意味する「MagniFinger」は、指先にはめる顕微鏡。触れる物を拡大してモニターに映し出し、同時に、その色の濃淡を細かな振動に変換して指に伝え、0.01ミリ単位で指を正確に動かすことができます。

 これまで人間は、体の不自由を補うために義手や義足、補聴器、心臓ペースメーカーなどを着けてきました。科学技術が発達し、今ではその高度な技術を体に施すことで、元の能力を超える力を発揮できます。スポーツでは反発力の高いカーボン製の義足を着けたドイツの走り幅跳び選手が、オリンピックで金メダル級の記録を出し、議論を呼んでいます。

 近年、ロボットや仮想現実(VR)の技術と合わせて研究が進み、「人間拡張工学」と呼ばれます。東大先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授(47)は、やがては体と道具の境界があいまいになると考えます。体を自らの手でつくり変えることができる人間を「スーパーヒューマン(超人類)」と定義。機械と一体になり、機械も体も自在に操り、次に遠隔操作ができ、精神と体が分離するという数々の実験を紹介し、近未来の人類の進化の道筋として予測しています。

 超人類への一歩を、人間は踏み出しているのかもしれません。代表例がマイクロチップの手への埋め込み。チップは長さ1センチ、幅2ミリほどで個人情報が登録され、ICカードや電子キーとして利用できる技術です。北アメリカやヨーロッパで徐々に広まり、約4000人と最も普及しているというスウェーデンでは鉄道乗車券として使えます。

 人工知能とロボットが食料を生産し、人間は不老不死に。そんな超人類の時代をめざし、人間の幸せを考える「トランスヒューマニズム」という思想も世界中にあります。日本では昨年、IT起業家の朝野巧己さんが有志とともに「日本トランスヒューマニスト協会」を発足。現在はマイクロチップの普及に取り組み、16日に東京で開催した説明会には1000人以上が参加しました。埋め込み費用は約2万円。電子キーとして使え、いずれ現金や身分証明書の代わりにと見込みます。

 ただ、お金のある人にしか利用できない技術になると、貧富の差が、能力や寿命などの差になってしまいます。また、人間は生まれたままの姿であるべきだと考える人も多くいますし、個人情報を管理しきれるか、不安もぬぐえません。稲見教授は「技術の進歩は人間にとって自然なこと」と強調し、「大事なのは技術をいかに使いこなすか。問題点を洗い出し、独占させないことも大切。誰もが普通に使えるようになれば、超人類も新しい『標準』になります」と展望します。

 さて、みなさんは人類の未来を、どう考えますか。

日本トランスヒューマニスト協会の説明会で示されたマイクロチップ=東京都千代田区で

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