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知るコレ!

木造文化財の「火の用心」  

世界文化遺産の白川郷で一斉放水訓練が行われ、水しぶきに包まれた合掌造り集落(2018年10月) 

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 フランス・パリの観光名所、世界文化遺産のノートルダム寺院(大聖堂)で、先月、木造の尖塔や屋根が焼け落ちる火災がありました。皆さんの地域にも木造の文化財がありませんか。歴史ある神社仏閣が多い京都市では、日常的に防火意識を高める取り組みが進んでいます。 (福沢英里)

 祇園祭で知られる京都市東山区の八坂神社。石の鳥居をくぐったすぐ脇にあるのが、「市民消火栓」です。学校の廊下にある赤い扉を連想すると少し違います。辺りは歴史ある町並みの保存を図る「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されており、木造家屋が続く景観に合うよう、保管箱はスギ材で作られています。

 案内してくれたのは、市の整備事業に携わった大窪健之・立命館大教授(文化遺産防災学)。「市民が利用できる消火栓があれば素早い消火活動ができると考えました」。扉を開けると、洗濯機で見かけるような直径3センチのホースがリング状に収納されています。使い方は簡単。箱の中のバルブをひねり、長さ30メートルのホースを引っ張り出して、火元へ向けてホース先端の放水口を回すだけ。消防士が使用する公設消火栓のホースは直径が16センチあり、水が通ると水圧の反動を受け、とても一人では扱えません。威力は劣るものの、市民消火栓なら一人で操作できます。

 八坂神社から約1.7キロ離れた清水寺までは、木造家屋が密集し、消防車両も通れないような狭い路地が入り組んでいます。その一帯に2006年から5年かけ、市民消火栓が43基、設置されました。「庭の水まきや洗車など、住民の皆さんは日常的に使っています。防災を意識する環境が身近にあることが大切です」と大窪教授。住民から使い勝手についての課題を集め、取り出しや収納がしやすく、簡単に延長できるホースも開発しました。

 昔ながらの「火の用心」も生きています。世界文化遺産の合掌造り集落で有名な岐阜県白川村では、住民が町内会ごとに「防火の見回り」を毎日しています。荻町地区では1日4回、拍子木を打つなどしてパトロールし、深夜は2人1組で村全体を回って不審火がないか目を光らせます。村教育委員会の松本継太さんは「明治時代の大火で多くのかやぶき家屋を焼失しました。一軒でも火を出したら、飛び火で集落全体を失うという危機意識が共有されています」と教えてくれました。

 文化財に比べ、その保護の歴史はそう古くはありません。70年前、世界文化遺産の法隆寺(奈良県斑鳩町)にある金堂の壁画が修復作業中に火災で焼け、これを教訓に1950年に文化財保護法ができました。55年には金堂が燃えた1月26日が「文化財防火デー」と定められました。

 文化財に多い木造建築は、屋根のわらや檜皮など、火の粉が移ると燃えやすい材料が多く、火の元を早く見つけて消火作業に入ることが、延焼を防ぐ鉄則。でも、「火災警報器や消火器は別にして、放水設備の設置は遅れています。景観を損ねたくないからです」と大窪教授は指摘。工事や管理にお金もかかります。

 放水設備では、岐阜県白川村が76年、かやぶきの家屋と家屋の間に59基の放水銃を整備。水源は山に置いた貯水槽にためた雨水です。地上との約80メートルの高低差を利用して、放水銃のバルブを回すと約30メートルの高さまで水が噴き上がります。火が隣の屋根に燃え移るのを防ぎます。

 消防車両が近寄れず、外から入りづらい国宝の姫路城(兵庫県姫路市)には、スプリンクラーがあります。97年から6年かけて天守閣の内部に配水管を巡らせました。「早く火を消すだけでなく、水も早く止め、水浸しによる損害を少なくするよう訓練しています」と担当者は話します。

合掌造りの家屋を守る放水銃。収納箱の屋根も合掌造り風だ=いずれも岐阜県白川村で

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