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知るコレ!

音が頼り 想像力の競技 ブラインドサッカー

守備(しゅび)の選手(せんしゅ)を前に1対(たい)1の練習(れんしゅう)をする郡(こおり)さん(右)

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 開幕(かいまく)まで500日を切った東京(とうきょう)パラリンピックの正式種目(せいしきしゅもく)ブラインドサッカー。日本は開催国枠(かいさいこくわく)で初出場(はつしゅつじょう)を果(は)たします。キーパー以外(いがい)の選手(せんしゅ)はアイマスクをし、音を頼(たよ)りにするというこのサッカーは、一体どのようにプレーするのでしょうか。名古屋(なごや)市が拠点(きょてん)のチーム「ミックスセンス」の練習(れんしゅう)を訪(たず)ねました。 (諏訪慧(すわさとし))

 4月中旬(ちゅうじゅん)、名古屋(なごや)市内の公園。キャプテン郡拓也(こおりたくや)さん(31)がキーパーが投(な)げたボールを足で止め、ゴールから15メートル離(はな)れた地点でドリブルを始(はじ)めます。ボールの直径(ちょっけい)は約(やく)19センチで、中に小さな金属(きんぞく)の玉が入っていて「シャカシャカ」と鳴るのが特徴(とくちょう)です。守備(しゅび)の選手(せんしゅ)の前まで進(すす)むと、キーパーの後ろにいる「ガイド」のチームメートが郡(こおり)さんに声を掛(か)けます。「2メートル先に敵(てき)!」

 一方、キーパーから「2歩左」と郡(こおり)さんの位置(いち)を知らされた守備(しゅび)の選手(せんしゅ)は、「ボイ」と声を張(は)ります。ブラインドサッカーは1980年代(だい)にスペインで始(はじ)まり、「ボイ」はスペイン語で「行く」の意味(いみ)。危険(きけん)な衝突(しょうとつ)を避(さ)けるため、ボールを奪(うば)いに行く時に口にしないと反則(はんそく)です。郡(こおり)さんは、細かいタッチで守備(しゅび)をかわしてシュートを放(はな)ちました。

 日本ブラインドサッカー協会(きょうかい)(東京(とうきょう))によると、競技(きょうぎ)が日本に導入(どうにゅう)されたのは2001年。現在(げんざい)、国内に20余(あま)りのチームがあり、健常者(けんじょうしゃ)を含(ふく)め約(やく)500人がプレーしています。国際試合(こくさいじあい)は全(まった)く目の見えない4人の選手(せんしゅ)と、目が見えるか弱視(じゃくし)のキーパーの計5人で戦(たたか)い、国内の試合(しあい)はアイマスクをすれば健常者(けんじょうしゃ)も出場できます。一人でも視覚障害者(しかくしょうがいしゃ)(弱視含(じゃくしふく)む)がいれば、出られる大会もあります。

 ミックスセンスは5年前に結成(けっせい)され、メンバー約(やく)30人中、視覚障害者(しかくしょうがいしゃ)は5人ほど。郡(こおり)さんは視神経萎縮(ししんけいいしゅく)という病気(びょうき)で視力(しりょく)は0.01。目の中央(ちゅうおう)の視野(しや)も欠(か)けています。高校1年生まで野球(やきゅう)をしていましたが、病気(びょうき)の進行(しんこう)により断念(だんねん)しました。

 ブラインドサッカーと出合ったのは大学生だった10年ほど前。視覚障害者(しかくしょうがいしゃ)のスポーツは水泳(すいえい)や柔道(じゅうどう)が有名(ゆうめい)ですが、郡(こおり)さんは「チームスポーツをやりたかった。音を頼(たよ)りにボールや相手(あいて)の位置(いち)を想像(そうぞう)するので、体だけでなく頭も使(つか)うのが楽しい」と話します。

 全速力(ぜんそくりょく)で走ったりボールを強く蹴(け)ったりしにくいので、男女や障害(しょうがい)の有無(うむ)の差(さ)はあまり出ないそうです。副代表(ふくだいひょう)を務(つと)める健常者(けんじょうしゃ)の杉山弘樹(すぎやまひろき)さん(29)は「サッカー経験(けいけん)のない人が多く、ハードルが低(ひく)いのが魅力(みりょく)です」と参加(さんか)を呼(よ)び掛(か)けます。

 想像力(そうぞうりょく)を存分(ぞんぶん)に働(はたら)かせて動(うご)くこの競技(きょうぎ)は、コミュニケーションを良(よ)くすることにも役立(やくだ)つそうです。日本ブラインドサッカー協会(きょうかい)は、2014年度(ねんど)から企業(きぎょう)などの研修(けんしゅう)に活用しています。18年度(ねんど)は108回実施(じっし)し、5000人近くが受講(じゅこう)。40回に約(やく)1200人が受(う)けた初年度(しょねんど)に比(くら)べて大幅(おおはば)に増(ふ)え、好評(こうひょう)です。

 指導(しどう)するのは視覚障害(しかくしょうがい)のある選手(せんしゅ)ら。見えない状態(じょうたい)でいかに情報(じょうほう)を伝(つた)え合うかに主眼(しゅがん)を据(す)えます。

 例(たと)えば、アイマスクをした人が地面(じめん)に置(お)いたボールを探(さが)し当てるゲームでは、周(まわ)りの人が「右」、「左」と位置(いち)を指示(しじ)。参加者(さんかしゃ)は、自分から見た「右」は、向(む)かいの相手(あいて)からは「左」になるという当たり前のことを改(あらた)めて実感(じっかん)します。「ちょっと前」などと、つい口にしがちな「ちょっと」は曖昧(あいまい)で伝(つた)わりにくく、「3歩前」のように具体的(ぐたいてき)に示(しめ)す大切さを意識(いしき)するようになるそうです。

 協会(きょうかい)の広報担当者(こうほうたんとうしゃ)によると、「相手(あいて)の立場でものごとを考えられるようになった」「社内のやりとりが活発(かっぱつ)になった」と感想(かんそう)が寄(よ)せられています。

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