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知るコレ!

触れずに演奏100年の魅力

発明(はつめい)から100年を迎(むか)えたテルミンを演奏(えんそう)する竹内正実(たけうちまさみ)さん=静岡県浜松(しずおかけんはままつ)市で

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 世界最古(せかいさいこ)の電子楽器(がっき)テルミンが生まれて、ことしで100年。ロシアのレフ・テルミン博士(はかせ)(1896〜1993年)が1919年に発明(はつめい)しました(20年という説(せつ)もあり)。触(ふ)れずに演奏(えんそう)する不思議(ふしぎ)な楽器(がっき)の魅力(みりょく)に迫(せま)りました。 (石川由佳理(いしかわゆかり))

 物理学者(ぶつりがくしゃ)のテルミン博士(はかせ)は、電気を蓄(たくわ)えたり放出(ほうしゅつ)したりする電子部品(ぶひん)「コンデンサー」に電圧(でんあつ)をかけると、音の高さが変(か)わることに気付(きづ)きます。その原理を応用(おうよう)し、テルミンを作りました。2つの高周波発振器(こうしゅうははっしんき)が中にあり、手を近づけたり遠ざけたりすると、その2つの発振器(はっしんき)の周波数(しゅうはすう)に差(さ)が発生(はっせい)してうなりが生じ、音の高さが変(か)わる仕組(しく)みです。

 テルミンは、教卓(きょうたく)のような形をしていて、人は立ったまま両手(りょうて)を動(うご)かして演奏(えんそう)します。演奏(えんそう)する側(がわ)から見て、右側(みぎがわ)に縦(たて)に伸(の)びるアンテナ、左側(ひだりがわ)には横(よこ)に伸(の)びるアンテナがあります。右手を近づけると音が高くなり、左手を近づけると小さくなります。両手(りょうて)を同時に空中で動(うご)かし、奏(かな)でる姿(すがた)はまるで魔法使(まほうつか)い。「フワーン」と独特(どくとく)な音が響(ひび)きます。

 独奏(どくそう)や、ピアノなどの他(ほか)の楽器(がっき)と共演(きょうえん)されることもあります。クラシック音楽にまつわる漫画(まんが)が原作の映画(えいが)「のだめカンタービレ最終楽章後編(さいしゅうがくしょうこうへん)」では、日本の奏者(そうしゃ)の第一人者(だいいちにんしゃ)、竹内正実(たけうちまさみ)さん(52)=静岡県浜松(しずおかけんはままつ)市=が演奏(えんそう)した音が使(つか)われています。竹内(たけうち)さんは、大阪芸術(おおさかげいじゅつ)大音楽学科を卒業後(そつぎょうご)、1993年から3年間ロシアに渡(わた)り、テルミン博士(はかせ)のいとこの孫(まご)にあたるリディア・カビナさんから演奏法(えんそうほう)を学びました。あまり知られていない楽器(がっき)ですが、ロシアよりも日本の方が奏者(そうしゃ)が多いそう。

 演奏(えんそう)を始(はじ)めるときは、まずピアノに音を合わせます。そこから手を少しずつ動(うご)かし、感覚(かんかく)で音階(おんかい)をつかみます。ピアノの「ド」は音階(おんかい)が定(さだ)まっていますが、テルミンでは「少し高いド」なども表現(ひょうげん)できます。竹内(たけうち)さんは、「手を1ミリ動(うご)かすと1ミリ分音が変(か)わる。難(むずか)しいけれど、自分の感覚(かんかく)と動作(どうさ)で音色をつくれるのが楽しい」と話します。

 名古屋(なごや)市内のとある教室。7人の女性(じょせい)が膝(ひざ)の上にロシアの民芸品(みんげいひん)「マトリョーシカ」を置(お)き、手をかざして不思議(ふしぎ)な音を奏(かな)でています。これは楽器(がっき)で、名前は「マトリョミン」。「もっとテルミンを身近(みぢか)に感(かん)じてほしい」と、竹内(たけうち)さんが2000年に開発(かいはつ)しました。高さ20センチほどのマトリョーシカの中に、小型(こがた)のテルミンが入っています。1体4万3200円と高額(こうがく)ですが、これまでに6000体以上(いじょう)を販売(はんばい)しました。

 いすに座(すわ)って足を組み、マトリョミンを膝(ひざ)に置(お)いて、右手を動(うご)かして音の高さを変(か)えます。音量(おんりょう)は本体のつまみで調整(ちょうせい)。合奏(がっそう)するときは自分の音を確(たし)かめるため、医師(いし)が使(つか)う聴診器(ちょうしんき)を差(さ)し込(こ)んで演奏(えんそう)します。15年以上(いじょう)学んでいるという愛知県江南(あいちけんこうなん)市の主婦安藤玲子(しゅふあんどうれいこ)さん(65)は「音は簡単(かんたん)に出せますが、表情(ひょうじょう)をつけるのが難(むずか)しい。でも難(むずか)しいからこそ奥深(おくぶか)く、うまく弾(ひ)きたくて長く続(つづ)けられています」と話します。

 テルミン発明(はつめい)100年を記念(きねん)し、竹内(たけうち)さんは9月14日に兵庫県神戸(ひょうごけんこうべ)市で、「テルミンの最多演奏者数(さいたえんそうしゃすう)」のギネス記録更新(きろくこうしん)に挑戦(ちょうせん)します。現在(げんざい)の記録(きろく)は、13年に静岡県浜松(しずおかけんはままつ)市内で自ら打(う)ち立てた272人。今回は、マトリョミンでベートーベンの「第(だい)九」を合奏(がっそう)します。竹内(たけうち)さんは、「テルミン博士(はかせ)からテルミン普及(ふきゅう)のバトンタッチを受(う)けたと思っているので、成果(せいか)を届(とど)けたい」と話します。

 

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