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知るコレ!

大使になりきり他国と交渉 模擬国連

東海地区(とうかいちく)高校模擬国連(もぎこくれん)大会で、サウジアラビアの大使(たいし)として会議(かいぎ)に参加(さんか)した高校生=岐阜(ぎふ)市の岐阜(ぎふ)高で(同高提供(ていきょう))

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 高校生や大学生らが、外国の大使(たいし)になったつもりで国際的(こくさいてき)な課題(かだい)を話し合う模擬国連会議(もぎこくれんかいぎ)。国連(こくれん)をお手本にして世界中(せかいじゅう)の大学などで取(と)り組まれ、日本では大学生でつくる団体(だんたい)「日本模擬国連(もぎこくれん)(JMUN(ジェームン))」が活動(かつどう)を広めています。「相手(あいて)の立場に立って考える力」などが身(み)に付(つ)くと教育現場(きょういくげんば)からも注目(ちゅうもく)されています。 (大沢悠(おおさわはるか))

意見訴え解決策考える

 「さまざまな国籍(こくせき)の学生がベストな決議案(けつぎあん)に向(む)かって協働(きょうどう)をしており、世界(せかい)大会らしさがどんどん出てきました」。先月下旬(げじゅん)、アメリカ・ニューヨークで開(ひら)かれた模擬国連(もぎこくれん)の全米(ぜんべい)大会を、日本の代表団(だいひょうだん)がツイートしました。大会は年1回開(ひら)かれ、今年は日本を含(ふく)め30カ国以上(いじょう)から集(あつ)まった5000人の学生が、「人身売買(じんしんばいばい)」や「海洋(かいよう)プラスチックゴミ及(およ)びマイクロプラスチック」など、国境(こっきょう)を超(こ)えたテーマについて英語(えいご)で話し合いました。

 模擬国連(もぎこくれん)は、国際政治(こくさいせいじ)の仕組(しく)みや、世界的(せかいてき)な課題(かだい)の解決策(かいけつさく)を考える場です。1923年にアメリカのハーバード大で行われた教育(きょういく)プログラム「模擬国際連盟(もぎこくさいれんめい)」が原点です。第二次世界大戦(だいにじせかいたいせん)の反省(はんせい)から、国際平和(こくさいへいわ)と安全(あんぜん)を保(たも)つことや国際協力(こくさいきょうりょく)のために設(もう)けられた組織(そしき)、国連(こくれん)の理念(りねん)を踏(ふ)まえます。

 日本では83年に、元国連難民高等弁務官(こくれんなんみんこうとうべんむかん)の緒方貞子(おがたさだこ)さんを中心に普及(ふきゅう)しました。JMUN(ジェームン)は2009年に誕生(たんじょう)。50大学、約(やく)800人が名を連(つら)ね、大学を拠点(きょてん)にした研究会(けんきゅうかい)もあります。

 会議(かいぎ)はどのように進むのでしょうか。

 参加者(さんかしゃ)は、あらかじめ担当(たんとう)する国と議題(ぎだい)を知らされます。本番までにその国や、他(ほか)の参加国(さんかこく)の情勢(じょうせい)を調(しら)べ、当日は担当国(たんとうこく)の大使(たいし)として会議(かいぎ)に出ます。自国の意見(いけん)を訴(うった)えるスピーチや、他(ほか)の大使(たいし)との自由交渉(じゆうこうしょう)を繰(く)り返(かえ)し、決議案(けつぎあん)を考え、決議(けつぎ)を採択(さいたく)するのが主(おも)な流(なが)れです。

 会議(かいぎ)は国連(こくれん)の総会本会議(そうかいほんかいぎ)のほか、平和維持活動(へいわいじかつどう)(PKO(ピーケーオー))やテロ対策(たいさく)などを決める安全保障理事会(あんぜんほしょうりじかい)、地球温暖化対策(ちきゅうおんだんかたいさく)を話し合う気候変動枠組(きこうへんどうわくぐ)み条約締約国会議(じょうやくていやくこくかいぎ)などを想定(そうてい)しています。

 東海(とうかい)地方では、岐阜(ぎふ)高校(岐阜(ぎふ)市)と海陽中等教育(かいようちゅうとうきょういく)学校(愛知県蒲郡(あいちけんがまごおり)市)が2月に「東海地区(とうかいちく)高校模擬国連(もぎこくれん)大会」を開(ひら)きました。議題(ぎだい)は「地雷問題(じらいもんだい)の解決(かいけつ)に向(む)けた包括的対策(ほうかつてきたいさく)」。地雷(じらい)について、「防衛上必要(ぼうえいじょうひつよう)」と主張(しゅちょう)するインドや、撤去(てっきょ)のための技術支援(ぎじゅつしえん)を求(もと)めるイラク、「完全撤廃(かんぜんてっぱい)」を掲(かか)げるドイツなど、12校の83人が、さまざまな立場をとる40カ国の大使(たいし)になりきり、決議案(けつぎあん)作りに頭をひねりました。

 運営(うんえい)した岐阜(ぎふ)高校3年の堀敏充(ほりとしみ)さん、大野隼(おおのしゅん)さん、山下倫未(やましたつぐみ)さんは、「多角的(たかくてき)な視点(してん)を持(も)てるようになった」と実感(じっかん)します。「各国大使(かっこくたいし)として議題(ぎだい)を考えるうちに『もし、この国だったら』と相手(あいて)の立場でも考えるようになりました」と山下(やました)さんは話します。

相手を尊重して説得する

 参加(さんか)する学生には、どのような力が求(もと)められるのでしょうか。JMUN(ジェームン)前代表(だいひょう)の東京(とうきょう)大4年孔徳湧(こうとくゆう)さん(21)は「相手(あいて)を説得(せっとく)し、巻(ま)き込(こ)む力など、理解力(りかいりょく)や語学力だけでない総合的(そうごうてき)な力です」と説明(せつめい)します。

 中高一貫(いっかん)の進学校(しんがくこう)に通い成績(せいせき)も良(よ)かった孔(こう)さんは、全(ぜん)日本高校模擬国連(もぎこくれん)大会の校内予選(よせん)で落(お)ちた経験(けいけん)が、ショックで忘(わす)れられません。「日本の教育(きょういく)は座学(ざがく)が多いが、学校を出たらそれだけでは通用しない。模擬国連(もぎこくれん)は学校では身(み)に付(つ)かない力が付(つ)きます」

 岐阜(ぎふ)高校で模擬国連(もぎこくれん)の担当(たんとう)をする沢田宏教諭(さわだひろしきょうゆ)は「相手(あいて)の考えを引き出して折(お)り合いをつける。他者(たしゃ)を尊重(そんちょう)し、立場の違(ちが)いを認(みと)めて初(はじ)めて成(な)り立つ話し合いは、極(きわ)めて高度(こうど)です。生徒(せいと)たちは刺激(しげき)し合い、自発的(じはつてき)に動(うご)きます。活動(かつどう)の中に学びの本質(ほんしつ)があります」と日々成長(せいちょう)する生徒(せいと)に目を見張(みは)ります。

 

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