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知るコレ!

地方と関わり続ける 関係人口

山の斜面(しゃめん)にサクラの苗木(なえぎ)を植(う)える子どもたち=愛知県豊田(あいちけんとよた)市栃本(とちもと)町で

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 日本では今、大都市圏(だいとしけん)に人口が集中(しゅうちゅう)する傾向(けいこう)が強くなり、人が減(へ)った地方の農漁村(のうぎょそん)で、産業(さんぎょう)や地域(ちいき)コミュニティーの維持(いじ)が困難(こんなん)になっています。この問題(もんだい)を解決(かいけつ)するキーワードとして、近年注目(ちゅうもく)が高まっているのが「関係(かんけい)人口」です。どのような考え方でしょうか。 (宮崎厚志(みやざきあつし))

体験、寄付…活気呼び込む

 3日、愛知県豊田(あいちけんとよた)市栃本(とちもと)町の山あいに、子どもたちの元気な声が響(ひび)きました。住民約(じゅうみんやく)50人の半数が65歳以上(さいいじょう)の高齢者(こうれいしゃ)で、小学生以下(いか)の子どもは4人という集落(しゅうらく)に、地域外(ちいきがい)から活気を呼(よ)び込(こ)もうと昨年(さくねん)から始(はじ)めた「桜(さくら)の森づくり」です。

 名古屋(なごや)市や豊田(とよた)市の都市部(としぶ)から家族(かぞく)を募集(ぼしゅう)。森にサクラの苗木(なえぎ)を植(う)えてもらい、「My(マイ)桜(さくら)」として名板(めいばん)も付(つ)けます。2年目となるこの日は26家族(かぞく)が110本を植(う)え、山の斜面(しゃめん)は大にぎわい。地元産(じもとさん)のじねんじょご飯(はん)や大鍋(おおなべ)での豚汁(とんじる)も振(ふ)る舞(ま)われました。

 夏には草刈(くさか)りのイベントもあります。参加家族(さんかかぞく)は子どもとサクラの成長(せいちょう)を重(かさ)ね、開花(かいか)の時期(じき)にお花見を楽しむこともできます。都会(とかい)ではできない体験(たいけん)と場所(ばしょ)を提供(ていきょう)し、地域(ちいき)の人との継続的(けいぞくてき)な交流(こうりゅう)を生み出す仕組(しく)み。訪(おとず)れた地元選出(せんしゅつ)の衆議院議員(しゅうぎいんぎいん)、八木哲也(やぎてつや)さんは、「感心(かんしん)したのはサクラの維持(いじ)も含(ふく)めていること。まさに関係(かんけい)人口の良(よ)い事例(じれい)だと思います」とうなずきました。

 総務省統計局(そうむしょうとうけいきょく)によると、2008年から本格的(ほんかくてき)な人口減少時代(げんしょうじだい)に入った日本。仕事(しごと)や教育環境(きょういくかんきょう)、生活の便利(べんり)さを求(もと)めて都市(とし)に人口が集中(しゅうちゅう)する傾向(けいこう)は強まる一方で、栃本(とちもと)町のように、人が減(へ)り高齢化(こうれいか)によって維持(いじ)が難(むずか)しくなっている地域(ちいき)が増(ふ)えています。そうした自治体(じちたい)や政府(せいふ)は、観光(かんこう)で地域(ちいき)に興味(きょうみ)を持(も)ってもらい、その先の移住(いじゅう)を呼(よ)び掛(か)けますが、難(むずか)しいのが現実(げんじつ)です。

 そこで近年取(と)り組まれているのが、「関係(かんけい)人口」を増(ふ)やす活動(かつどう)です。これは、観光(かんこう)などで一時的(いちじてき)に関(かか)わる「交流(こうりゅう)人口」と、移住者(いじゅうしゃ)などの「定住(ていじゅう)人口」の間の考え方で、地域(ちいき)に興味(きょうみ)を持(も)ち関(かか)わり続(つづ)ける人たちのこと。ふるさと納税(のうぜい)によって財政的(ざいせいてき)に支援(しえん)をしたり、短期滞在(たんきたいざい)で農業(のうぎょう)や漁業(ぎょぎょう)を体験(たいけん)したり、芸術祭(げいじゅつさい)の運営(うんえい)に携(たずさ)わったりと、その関(かか)わり方はさまざまです。

都市住民の人生を豊かに

 関係(かんけい)人口を最初(さいしょ)に提唱(ていしょう)したのは、元岩手県議会議員(いわてけんぎかいぎいん)の高橋博之(たかはしひろゆき)さん(44)です。きっかけは、2011年末(まつ)ごろ、東日本大震災(だいしんさい)によって深刻(しんこく)な人口減少(げんしょう)に見舞(みま)われた同県大槌(けんおおつち)町のある町内会長のひと言でした。「これからは住人(じゅうにん)だけではやっていけない。ボランティアの人も町内会員(ちょうないかいいん)として認(みと)めて、地域(ちいき)に足りないノウハウを教えてもらおう」

 この言葉(ことば)から、復興(ふっこう)のためには被災(ひさい)した地域(ちいき)と関係(かんけい)を持(も)ち続(つづ)ける人を増(ふ)やさなければならないと考えた高橋(たかはし)さんは、13年に「東北(とうほく)食べる通信(つうしん)」を創刊(そうかん)しました。東北(とうほく)地方の食材(しょくざい)を付録(ふろく)とし、生産(せいさん)の背景(はいけい)やこだわりを伝(つた)える情報誌(じょうほうし)です。地方の「つくる」と大都市(だいとし)の「食べる」をつなぎ、生産者(せいさんしゃ)と消費者(しょうひしゃ)が直接交流(ちょくせつこうりゅう)するイベントも開(ひら)いて関係(かんけい)人口を生んでいます。

 「食べる通信(つうしん)」は今や日本国内で37団体(だんたい)、台湾(たいわん)4団体(だんたい)に広まり、日本と同様(どうよう)の人口問題(もんだい)を抱(かか)える韓国(かんこく)でも始(はじ)まります。愛知県(あいちけん)でもこの3月に「あいち食べる通信(つうしん)」と「知多半島(ちたはんとう)食べる通信(つうしん)」が相次(あいつ)いで創刊(そうかん)。愛知県(あいちけん)のように都市部(としぶ)と農村部(のうそんぶ)がはっきり分かれていると、近い距離(きょり)での関係(かんけい)人口をつくりやすいというメリットがあります。

 総務省(そうむしょう)も昨年(さくねん)、「『関係(かんけい)人口』ポータルサイト」を開設(かいせつ)し、考え方が急速(きゅうそく)に広まっています。ただ高橋(たかはし)さんは、「移住(いじゅう)につなげようとするとなかなかうまくいかない」と指摘(してき)します。大事(だいじ)なのは、「地方からの片思(かたおも)いではなく、都会(とかい)の人が地方を必要(ひつよう)とすること」。複数(ふくすう)の場所(ばしょ)で生きがいや、やりがいを持(も)つことで、人生をより豊(ゆた)かにできると気付(きづ)いてほしいと強調(きょうちょう)しました。

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