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知るコレ!

私たちが問い、選ぶ将来 住民投票

県民投票(けんみんとうひょう)の実施(じっし)を伝(つた)えるのぼり旗(ばた)=沖縄県那覇(おきなわけんなは)市で

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 先月24日、沖縄県(おきなわけん)で県民投票(けんみんとうひょう)がありました。県内(けんない)の宜野湾(ぎのわん)市にあるアメリカ軍(ぐん)の普天間飛行場(ふてんまひこうじょう)を移(うつ)すため、国が名護(なご)市辺野古(へのこ)の沿岸部(えんがんぶ)を埋(う)め立てることについて、賛成(さんせい)か反対(はんたい)かを県民(けんみん)に問(と)う内容(ないよう)です。県民投票(けんみんとうひょう)は、都道府県(とどうふけん)レベルで行われる住民投票(じゅうみんとうひょう)のこと。仕組(しく)みや意義(いぎ)について、専門家(せんもんか)に聞きました。 (福沢英里(ふくざわえり))

 大阪(おおさか)市で3月初(はじ)めにあった、沖縄(おきなわ)の県民投票(けんみんとうひょう)を振(ふ)り返(かえ)る報告会(ほうこくかい)。国内外の住民投票(じゅうみんとうひょう)を取材(しゅざい)してきたジャーナリストの今井一(いまいはじめ)さんはまず、選挙(せんきょ)と住民投票(じゅうみんとうひょう)の違(ちが)いについて説明(せつめい)しました。「人を選(えら)ぶ選挙(せんきょ)に対(たい)し、住民投票(じゅうみんとうひょう)は事柄(ことがら)を選(えら)ぶ。自分たちが住(す)む地域(ちいき)で問題(もんだい)が起(お)きた時、議員(ぎいん)や市長などの首長に委(ゆだ)ねず、自分で考え、どうしたらいいのかを選択(せんたく)する仕組(しく)みのことです」

 今回は辺野古沿岸部(へのこえんがんぶ)の埋(う)め立てについて「賛成(さんせい)」「反対(はんたい)」「どちらでもない」の3つの選択肢(せんたくし)から1つを選(えら)びました。結果(けっか)は「反対(はんたい)」が72・2%を占(し)め、県民(けんみん)の多くが埋(う)め立ててほしくない意思(いし)を示(しめ)しました。

 住民投票(じゅうみんとうひょう)は、自治体(じちたい)が「住民投票条例(じゅうみんとうひょうじょうれい)」を定(さだ)めて進(すす)めることができます。首長や議員(ぎいん)が条例案(じょうれいあん)を議会(ぎかい)に提案(ていあん)するほか、住民(じゅうみん)が有権者(ゆうけんしゃ)の2%以上(いじょう)の署名(しょめい)を集(あつ)めて実施(じっし)を求(もと)め、議会(ぎかい)が認(みと)めれば行えます。今回、沖縄(おきなわ)で住民投票(じゅうみんとうひょう)をやろうと声を上げたのは20代(だい)の若者(わかもの)たちでした。

 国内で自治体(じちたい)の条例(じょうれい)に基(もと)づいた住民投票(じゅうみんとうひょう)は400件以上(けんいじょう)。現実(げんじつ)には署名(しょめい)を集(あつ)めても議会(ぎかい)で否決(ひけつ)され、住民投票(じゅうみんとうひょう)まで至(いた)らない事例(じれい)がほとんどです。それでも住民投票(じゅうみんとうひょう)をしようという声が絶(た)えないのは、選挙(せんきょ)で選(えら)ばれた政党(せいとう)や政治家(せいじか)がやろうとすることと、有権者(ゆうけんしゃ)の意思(いし)にずれが生じるからです。住民投票(じゅうみんとうひょう)に詳(くわ)しい仏教(ぶっきょう)大の上田道明教授(うえだみちあききょうじゅ)は「有権者(ゆうけんしゃ)が、そのずれに異議(いぎ)を申(もう)し立てるための手段(しゅだん)の1つとして定着(ていちゃく)してきました」と説明(せつめい)します。

 一方、沖縄(おきなわ)で今井(いまい)さんが250人の有権者(ゆうけんしゃ)に対面調査(たいめんちょうさ)をしたところ「普天間(ふてんま)や辺野古(へのこ)のことはよく分からないから、投票(とうひょう)には行かない」と話す若者(わかもの)もいました。「最初(さいしょ)から基地(きち)の問題(もんだい)に詳(くわ)しい人はいません。住民投票(じゅうみんとうひょう)をやるからこそ、問題(もんだい)に関心(かんしん)が湧(わ)くのです」と今井(いまい)さん。

 日本最初(さいしょ)の条例(じょうれい)に基(もと)づく住民投票(じゅうみんとうひょう)は1996年、新潟県巻(にいがたけんまき)町(当時)の原子力発電所建設(げんしりょくはつでんしょけんせつ)の是非(ぜひ)を問(と)うため行われました。地元の新聞に賛否両派(さんぴりょうは)の意見(いけん)が掲載(けいさい)されるなどして、住民(じゅうみん)の学習意欲(がくしゅういよく)がかき立てられました。住民(じゅうみん)の熱意(ねつい)が町主催(しゅさい)の討論会(とうろんかい)につながり、専門家(せんもんか)や町民代表(ちょうみんだいひょう)の議論(ぎろん)に約(やく)700人が耳を傾(かたむ)けました。「住民投票(じゅうみんとうひょう)を経験(けいけん)した地域(ちいき)では『私(わたし)たちが主権者(しゅけんしゃ)だ』という自覚(じかく)が強まります」と今井(いまい)さんは意義(いぎ)を強調(きょうちょう)します。

 アメリカ軍基地(ぐんきち)や原子力発電所(げんしりょくはつでんしょ)ばかりが争点(そうてん)ではありません。上田教授(うえだきょうじゅ)の調(しら)べ=表(ひょう)=では、学校のエアコン設置(せっち)や図書館建設(としょかんけんせつ)など、みなさんにも身近(みぢか)な問題(もんだい)が扱(あつか)われています。2004年前後は、市町村の合併(がっぺい)がよく争点(そうてん)になりました。

 自治体(じちたい)のユニークな考えが表(あらわ)れることもあります。北海道奈井江(ほっかいどうないえ)町では03年10月、小学5年生以上(いじょう)に「子ども投票(とうひょう)」として参加(さんか)を認(みと)め、「自分たちの町の将来(しょうらい)を、みんなでよく話し合って決(き)めよう」と投票(とうひょう)を呼(よ)びかけました。上田教授(うえだきょうじゅ)は、未成年(みせいねん)が適切(てきせつ)に判断(はんだん)できるかどうかを問(と)う前に「どれだけ問題(もんだい)について知ることができるか、環境整備(かんきょうせいび)こそ大切」と話します。

 限界(げんかい)もあります。沖縄(おきなわ)の条例(じょうれい)を読むと「知事(ちじ)は結果(けっか)を尊重(そんちょう)しなければならない」とあり、知事以外(ちじいがい)が結果(けっか)に従(したが)う義務(ぎむ)や従(したが)わない場合の罰則(ばっそく)は定(さだ)めていません。実際(じっさい)、埋(う)め立てを主導(しゅどう)する政府(せいふ)は工事(こうじ)を続(つづ)ける構(かま)えです。

 1997年に岐阜県御嵩(ぎふけんみたけ)町の産業廃棄物処理場建設(さんぎょうはいきぶつしょりじょうけんせつ)の是非(ぜひ)を住民投票(じゅうみんとうひょう)で問(と)うた元町長の柳川喜郎(やながわよしろう)さん(86)は「国は本当に結果(けっか)に従(したが)う義務(ぎむ)はないのでしょうか。丁寧(ていねい)に説明(せつめい)し、議論(ぎろん)を続(つづ)けるべきです」と、国の姿勢(しせい)に疑問(ぎもん)を投(な)げかけます。

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