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知るコレ!

毛包の幹細胞から「タネ」 髪の毛を作る

髪(かみ)の毛がとても長い川原(かわはら)しのぶさん=東京都内(とうきょうとない)で

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 病気(びょうき)や男性(だんせい)ホルモンの影響(えいきょう)で、減(へ)ってしまうこともある髪(かみ)の毛。それを今までにない方法(ほうほう)で増(ふ)やす研究(けんきゅう)が、年内にもヒトを使(つか)って行われます。体に生えている毛を作り出す「毛包(もうほう)」という器官(きかん)の特徴(とくちょう)を生かした試(こころ)みです。 (佐橋大(さはしひろし))

移植する研究 ヒトでも試み

 「毛を作り出す毛包(もうほう)は、人体で唯一(ゆいいつ)、再生(さいせい)を繰(く)り返(かえ)す器官(きかん)です」。理化学研究所生命機能科学研究(りかがくけんきゅうじょせいめいきのうかがくけんきゅう)センターの辻孝(つじたかし)チームリーダー(57)は、こう教えてくれました。髪(かみ)の毛を増(ふ)やす研究(けんきゅう)に挑(いど)んでいる研究者(けんきゅうしゃ)です。

 私(わたし)たちの体は多くの細胞(さいぼう)でできています。心臓(しんぞう)や目、皮膚(ひふ)、毛包(もうほう)といった器官(きかん)は胎児(たいじ)のときに作られ、その器官(きかん)のタネを作り出すのが幹細胞(かんさいぼう)と呼(よ)ばれる細胞(さいぼう)です。

 幹細胞(かんさいぼう)は2種類(しゅるい)あり、お互(たが)いに情報(じょうほう)をやりとりして器官(きかん)ができあがっていきます。幹細胞(かんさいぼう)は普通(ふつう)、胎児(たいじ)にしかありませんが、生まれた後も2種類(しゅるい)の幹細胞(かんさいぼう)があり、再生(さいせい)を繰(く)り返(かえ)す唯一(ゆいいつ)の器官(きかん)が毛包(もうほう)です。

 辻(つじ)さんたちはまず、2種類(しゅるい)の幹細胞(かんさいぼう)を立体的(りったいてき)に組み立てる技術(ぎじゅつ)を開発(かいはつ)しました。その技術(ぎじゅつ)を利用(りよう)して、マウスの胎児(たいじ)から取(と)り出した幹細胞(かんさいぼう)を使(つか)って歯(は)のタネを作り、マウスの歯(は)を抜(ぬ)いた所(ところ)に移植(いしょく)したところ、神経(しんけい)もある歯(は)ができました。

 次(つぎ)に大人のマウスの毛包(もうほう)から取(と)り出した幹細胞(かんさいぼう)を使(つか)って毛包(もうほう)のタネを作り、マウスの皮膚(ひふ)の下に移植(いしょく)したところ、やはり毛が生えてきました。

 辻(つじ)さんたちは企業(きぎょう)と協力(きょうりょく)して、毛包(もうほう)のタネを大量(たいりょう)に作る技術(ぎじゅつ)も生み出しました。今は、動物(どうぶつ)を使(つか)って、その安全性(あんぜんせい)などを確(たし)かめているところです。今年中に、大学病院(びょういん)で、増(ふ)やしたヒトの毛包(もうほう)のタネを初(はじ)めてヒトに移植(いしょく)し、安全性(あんぜんせい)や有効性(ゆうこうせい)を確(たし)かめる臨床研究(りんしょうけんきゅう)に移(うつ)りたいといいます。

 男性(だんせい)ホルモンの影響(えいきょう)で髪(かみ)の毛が薄(うす)くなっている部分(ぶぶん)の毛包(もうほう)は、男性(だんせい)ホルモンの影響(えいきょう)を受(う)けやすい性質(せいしつ)を持(も)っています。2週間で生え替(か)わる腕(うで)や脚(あし)などの他(ほか)の体毛の毛包(もうほう)に近い状態(じょうたい)です。

 移植(いしょく)は、男性(だんせい)ホルモンの影響(えいきょう)を受(う)けにくく脱毛症(だつもうしょう)にほとんどならない後頭部(こうとうぶ)の毛包(もうほう)を使(つか)います。幹細胞(かんさいぼう)を取(と)り出して増(ふ)やし、毛包(もうほう)のタネを作って、髪(かみ)の薄(うす)い所(ところ)に移植(いしょく)します。生えた髪(かみ)も男性(だんせい)ホルモンの影響(えいきょう)を受(う)けにくく、生え替(か)わりの周期(しゅうき)も一般的(いっぱんてき)な3〜6年と考えられています。

 「毛包(もうほう)の数を増(ふ)やせるのがこの方法(ほうほう)の強みです」と辻(つじ)さんは話します。

伸びに個人差 2メートルの長さも

 髪(かみ)の毛は、一般(いっぱん)に1カ月に1センチ程度伸(ていどの)びます。ただ、生え替(か)わる頻度(ひんど)や速(はや)さは個人差(こじんさ)が大きく、とても長く伸(の)びる人もいます。

 東京都内(とうきょうとない)の会社員(かいしゃいん)、川原(かわはら)しのぶさんは、つむじから毛先までの長さが約(やく)2メートルの髪(かみ)の持(も)ち主(ぬし)です。胸元(むなもと)のあたりの長さだった頃(ころ)、「どこまで伸(の)びるんだろう」と伸(の)ばし始(はじ)めて16年。一度(ど)も切らずにおいたら今の長さに。特別(とくべつ)なことはしていないそうです。身長(しんちょう)より40センチ以上(いじょう)長い髪(かみ)は、普段(ふだん)は頭の上で器用(きよう)にまとめています。

 川原(かわはら)さんは昨年(さくねん)10月、大分県杵築(おおいたけんきつき)市で開(ひら)かれた「鬚自慢(ひげじまん)コンクール」の黒髪(くろかみ)の部(ぶ)で優勝(ゆうしょう)しました。コンクールは、神社(じんじゃ)の名前に由来(ゆらい)して毎年あり、黒髪(くろかみ)の部(ぶ)では長さや美(うつく)しさを審査(しんさ)。川原(かわはら)さんは5回目の優勝(ゆうしょう)です。「同じように、とても長く髪(かみ)を伸(の)ばしている人と仲良(なかよ)くなれるのが楽しみ」と話します。

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