トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

ブームの裏で密輸も カワウソ 

身(み)を寄(よ)せ合って遊(あそ)ぶコツメカワウソの群(む)れ=愛知県豊橋(あいちけんとよはし)市の豊橋総合動植物(とよはしそうごうどうしょくぶつ)公園で

写真

 インドや東南(とうなん)アジアなどに広く生息(せいそく)している野生動物(やせいどうぶつ)のコツメカワウソ。日本では、テレビ番組や会員制交流(かいいんせいこうりゅう)サイト(SNS(エスエヌエス))への投稿(とうこう)などから「かわいい」と人気が高まり、直接触(ちょくせつふ)れあえる「カワウソカフェ」なども各地(かくち)で営業(えいぎょう)しています。ただ、ブームの裏側(うらがわ)には問題点(もんだいてん)もあるようです。 (辻紗貴子(つじさきこ))

 体長40〜60センチ、カワウソの中でも小型(こがた)のコツメカワウソは、豊橋総合動植物(とよはしそうごうどうしょくぶつ)公園(愛知県豊橋(あいちけんとよはし)市)でも人気者(にんきもの)です。放飼場(ほうしじょう)にいるのは国内の動物園(どうぶつえん)で生まれたつがいとその子どもたち。小石を前脚(まえあし)で持(も)って遊(あそ)んだり、麻袋(あさぶくろ)に体をこすり付(つ)けたりする姿(すがた)は本当にかわいいです。

 飼育員(しいくいん)の井上康子(いのうえやすこ)さん(48)は「清潔(せいけつ)な水場と、暖(あたた)かい地域(ちいき)の動物(どうぶつ)なので暖房設備(だんぼうせつび)が必要(ひつよう)。強い臭(にお)いもあります」と飼育(しいく)は簡単(かんたん)ではないと言います。「人に慣(な)れはするけど、本来ペットではなく野生動物(やせいどうぶつ)なのです」

 水辺(みずべ)や森に暮(く)らす野生のコツメカワウソは、そのすみかが開発(かいはつ)などにより荒(あ)らされています。日本などでペットとして高値(たかね)で売れるようになったために捕獲(ほかく)の危険(きけん)にもさらされています。野生動物(やせいどうぶつ)を守(まも)るための国際的(こくさいてき)な約束(やくそく)「ワシントン条約(じょうやく)」には国際取引(こくさいとりひき)を規制(きせい)しないと絶滅(ぜつめつ)の恐(おそ)れがあると記されています。

 商売(しょうばい)のための国際取引(こくさいとりひき)には輸出国(ゆしゅつこく)の許可(きょか)が必要(ひつよう)です。日本では1月に無許可(むきょか)で輸入(ゆにゅう)しようとして逮捕者(たいほしゃ)が出ました。生息地(せいそくち)のあるインドなどは、ビロードカワウソを含(ふく)め国際取引(こくさいとりひき)を禁止(きんし)するよう提案(ていあん)しています。

 環境団体(かんきょうだんたい)「世界自然保護基金(せかいしぜんほごききん)(WWF(ダブリュダブリュエフ))ジャパン」によると、密輸未遂(みつゆみすい)で2017年に東南(とうなん)アジアで保護(ほご)された45頭のうち32頭が日本向(む)け。11〜18年に日本の販売事業者(はんばいじぎょうしゃ)が取(と)り扱(あつか)った85頭のうち29頭の出どころが不明(ふめい)でした。タイの闇市場(やみしじょう)で1頭数千円で取引(とりひき)され、日本では約(やく)80万〜162万円と高騰(こうとう)しています。

 WWF(ダブリュダブリュエフ)ジャパンのペット取引担当(とりひきたんとう)、浅川陽子(あさかわようこ)さん(39)は「日本では合法的(ごうほうてき)に取引(とりひき)された動物(どうぶつ)だと証明(しょうめい)する義務(ぎむ)が事業者(じぎょうしゃ)にありません」と指摘(してき)し「動物(どうぶつ)の生態(せいたい)をよく知り、環境(かんきょう)や絶滅(ぜつめつ)の恐(おそ)れのある種(しゅ)を守(まも)る大切さを理解(りかい)する事業者(じぎょうしゃ)だけが扱(あつか)えるような法規制(ほうきせい)が必要(ひつよう)です」と呼(よ)び掛(か)けます。

 実(じつ)は、過去(かこ)には日本にも野生のカワウソがたくさんいました。北海道(ほっかいどう)から九州(きゅうしゅう)まで広く分布(ぶんぷ)し、「ニホンカワウソ」と呼(よ)ばれます。

 2012年に環境省(かんきょうしょう)が「絶滅(ぜつめつ)」したと判断(はんだん)しました。筑紫女学園(ちくしじょがくえん)大の佐々木浩教授(ささきひろしきょうじゅ)(61)=動物生態学(どうぶつせいたいがく)=によると、明治(めいじ)から大正時代(たいしょうじだい)にかけ毛皮(けがわ)や漢方薬(かんぽうやく)の材料(ざいりょう)になる肝臓(かんぞう)を目当てに乱獲(らんかく)され、以後(いご)も開発(かいはつ)により生息地(せいそくち)が破壊(はかい)されて数が激減(げきげん)。「1928年に狩猟(しゅりょう)が禁止(きんし)された後も、漁業(ぎょぎょう)への影響(えいきょう)を恐(おそ)れた人間に殺(ころ)されたケースも多いです」

 2017年、九州(きゅうしゅう)と韓国(かんこく)の間にある島、対馬(つしま)(長崎県対馬(ながさきけんつしま)市)でカワウソの姿(すがた)が撮影(さつえい)され、「ニホンカワウソの生き残(のこ)りか」と注目(ちゅうもく)されました。当時、佐々木教授(ささききょうじゅ)も環境省(かんきょうしょう)の調査(ちょうさ)に携(たずさ)わり、採取(さいしゅ)したふんから、ユーラシア大陸(たいりく)に分布(ぶんぷ)するユーラシアカワウソのDNA(ディーエヌエー)が検出(けんしゅつ)されました。

 ただ、そもそもニホンカワウソが日本固有種(こゆうしゅ)かどうかは確定(かくてい)していません。環境省(かんきょうしょう)は、ユーラシアカワウソの「亜種(あしゅ)」、つまり、すむ環境(かんきょう)の違(ちが)いなどから体が変化(へんか)した種(しゅ)と定義(ていぎ)しています。「朝鮮半島(ちょうせんはんとう)から対馬(つしま)に来てすみつき、日本に野生カワウソが『復活(ふっかつ)した』とも考えられます」。カワウソが対馬(つしま)と朝鮮半島間(ちょうせんはんとうかん)の約(やく)50キロを泳(およ)ぐのは難(むずか)しいですが、「流木(りゅうぼく)などに乗(の)った状態(じょうたい)で対馬海流(つしまかいりゅう)に流(なが)された可能性(かのうせい)はあります」。

 「海も陸(りく)も環境(かんきょう)はつながっています。カワウソに限(かぎ)らず生態系(せいたいけい)の保全(ほぜん)は人間にも重要(じゅうよう)です」と佐々木教授(ささききょうじゅ)は話しました。

写真
 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索