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知るコレ!

観光客あふれ 生活影響 オーバーツーリズム

世界遺産(せかいいさん)の合掌造(がっしょうづく)り集落(しゅうらく)を背(せ)に写真(しゃしん)を撮影(さつえい)する外国人観光客(かんこうきゃく)=岐阜県白川(ぎふけんしらかわ)村で

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 「オーバーツーリズム」という言葉(ことば)を聞いたことがありますか? 観光地(かんこうち)などに、その受(う)け入れ態勢(たいせい)を大幅(おおはば)に超(こ)える観光客(かんこうきゃく)が訪(おとず)れて、地域住民(ちいきじゅうみん)の生活や自然環境(しぜんかんきょう)、観光客(かんこうきゃく)の満足度(まんぞくど)などにマイナスの影響(えいきょう)が出ている状況(じょうきょう)のことです。住民(じゅうみん)も観光客(かんこうきゃく)も、お互(たが)いに気持(きも)ち良(よ)く過(す)ごすためにはどのようなことができるのでしょうか。 (大沢悠(おおさわはるか))

 「予約(よやく)はしましたか?」

 一月下旬(げじゅん)の日曜、岐阜県白川(ぎふけんしらかわ)村の村営駐車場前(そんえいちゅうしゃじょうまえ)で、係員(かかりいん)が、中国(ちゅうごく)から来た男性観光客(だんせいかんこうきゃく)に中国語(ちゅうごくご)で尋(たず)ねていました。男性(だんせい)は、スマートフォンで予約(よやく)チケットを見せます。今シーズンから、予約(よやく)をした観光客(かんこうきゃく)だけが入村できる取(と)り決(き)めが始(はじ)まったのです。

 村内にある世界遺産(せかいいさん)の合掌造(がっしょうづく)り集落(しゅうらく)では、一、二月の日曜と祝日(しゅくじつ)の夜、ライトアップが行われ、冬の風物詩(ふうぶつし)となっています。雪景色(ゆきげしき)に浮(う)かぶ幻想的(げんそうてき)な風景(ふうけい)を一目見ようと、村の人口が約(やく)千六百人なのに対(たい)し、一日八千人ほどの観光客(かんこうきゃく)が訪(おとず)れるほどに人気が高くなっていました。乗用車(じょうようしゃ)で来る人も多く、大渋滞(だいじゅうたい)が起(お)こるなどの問題(もんだい)が発生(はっせい)しました。

 観光(かんこう)は村を支(ささ)える基盤産業(きばんさんぎょう)です。働(はたら)く人の五割(わり)近くが宿泊(しゅくはく)や土産(みやげ)の販売(はんばい)などの観光業(かんこうぎょう)に携(たずさ)わっています。観光客(かんこうきゃく)に来てもらいつつ、村で暮(く)らす人々ともども気持(きも)ち良(よ)く過(す)ごすにはどうすればいいのか。村や住民(じゅうみん)が考えたのが、事前予約制(じぜんよやくせい)でした。一日の上限(じょうげん)を五千人と決(き)めました。

 同村観光振興課(かんこうしんこうか)の尾崎達也(おざきたつや)さん(42)は「世界遺産(せかいいさん)の保全(ほぜん)と住民(じゅうみん)の生活、観光(かんこう)が維持(いじ)できる仕組(しく)みを考えないといけない」と話します。

 オーバーツーリズムは、日本を訪(おとず)れる外国人観光客(かんこうきゃく)が年々増(ふ)えているのに伴(ともな)って問題(もんだい)が表面化(ひょうめんか)してきました。外国人観光客数(かんこうきゃくすう)は二〇一八年は前年比(ぜんねんひ)8・7%増(ぞう)の三千百十九万人で過去最高(かこさいこう)を記録(きろく)しています。

 観光地(かんこうち)として人気のある町では対応(たいおう)に追(お)われています。京都(きょうと)市は、観光施設(かんこうしせつ)を開(ひら)く時間を早め、朝の時間を有効(ゆうこう)に使(つか)ってもらう「朝観光(あさかんこう)」を提唱(ていしょう)。ほか、まだあまり知られていないエリアを紹介(しょうかい)し、人気のある観光地(かんこうち)から人を分散(ぶんさん)させようとしています。

 神奈川県鎌倉(かながわけんかまくら)市では、市内を通る電車「江(え)ノ電(でん)」が人気で、二時間待(ま)ちになることも。このため市が発行(はっこう)した証明書(しょうめいしょ)を持(も)つ地域住民(ちいきじゅうみん)が優先(ゆうせん)して乗車(じょうしゃ)できるようにしたり、観光客(かんこうきゃく)に歩いて目的地(もくてきち)まで行ってもらうよう呼(よ)び掛(か)けたりして混雑(こんざつ)を減(へ)らそうとしています。

 政府(せいふ)が二〇年に四千万人の訪日客(ほうにちきゃく)を目標(もくひょう)に掲(かか)げる中、遅(おく)ればせながら観光庁(かんこうちょう)も昨年(さくねん)六月、「持続可能(じぞくかのう)な観光推進本部(かんこうすいしんほんぶ)」を設(もう)け、十月にはオーバーツーリズムの実態(じったい)を知るため百五十ほどの自治体(じちたい)にアンケートをしました。一九年度初(ねんどはじ)めに結果(けっか)を発表(はっぴょう)する予定(よてい)です。

 観光庁(かんこうちょう)の担当者(たんとうしゃ)は「本来、観光(かんこう)は地域住民(ちいきじゅうみん)と観光客(かんこうきゃく)に益(えき)をもたらします。お互(たが)いが気持(きも)ち良(よ)くいられるよう課題(かだい)を取(と)り除(のぞ)いていくことが大事(だいじ)」と話しますが、現場(げんば)は知恵(ちえ)を絞(しぼ)らなければなりません。

 ただ、せっかく海外から来てくれた観光客(かんこうきゃく)には快(こころよ)く過(す)ごしてもらいたいですね。

 立教(りっきょう)大観光学部(かんこうがくぶ)の麻生憲一教授(あそうけんいちきょうじゅ)は「見知らぬ観光客(かんこうきゃく)を町中で見かけても、『こわい』と思って逃(に)げ出すのではなく、『温(あたた)かく迎(むか)え入れよう』という気持(きも)ちで笑顔(えがお)であいさつしてみては」と呼(よ)び掛(か)けます。

ライトアップ見学の予約(よやく)ページ

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