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知るコレ!

「肉」や「皮」もっと活用を イノシシをいかす

解体処理(かいたいしょり)されたイノシシの皮(かわ)を取(と)り出す安田大介(やすだだいすけ)さん=岐阜県郡上(ぎふけんぐじょう)市のリバーウッドオートキャンプ場で

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 2019年の干支(えと)は亥(い)、イノシシの年です。ですが、近年、人口が減(へ)った山間地域(さんかんちいき)などで、里山にえさを求(もと)めて現(あらわ)れ爆発的(ばくはつてき)に増加(ぞうか)。田畑(たはた)を荒(あ)らす有害鳥獣(ゆうがいちょうじゅう)に指定(してい)され、17年度(ねんど)の農作物(のうさくもつ)の被害額(ひがいがく)は年間約(やく)48億(おく)円に上ります。狩猟(しゅりょう)で対抗(たいこう)するも、年間60万頭を超(こ)える駆除(くじょ)頭数のうち食用などにいかされているのは、たった7%ほど。害獣とはいえ大切な命(いのち)。もっと有効(ゆうこう)に活用する方法(ほうほう)を探(さぐ)りました。 (宮崎厚志(みやざきあつし))

駆除・捕獲しジビエを推進

 豊(ゆた)かな山林を有(ゆう)する岐阜県(ぎふけん)は「ぎふジビエ」と銘打(めいう)って、狩猟(しゅりょう)による野生鳥獣肉(やせいちょうじゅうにく)の食用、フランス語で言う「ジビエ」を推進(すいしん)しています。中でも町ぐるみで盛(も)り上がっているのが揖斐川(いびがわ)町。同町谷汲地区(たにぐみちく)のシャルキュトリー(加工(かこう)肉)レストラン「里山(さとやま)きさら」では、自社の加工処理施設(しょりしせつ)に持(も)ち込(こ)まれたシカやイノシシを手早くさばき、ハムやソーセージといった加工食品(しょくひん)にして売り出しています。現在(げんざい)は県内で発生(はっせい)した豚(とん)コレラの影響(えいきょう)で提供(ていきょう)を自粛(じしゅく)していますが、イノシシ料理(りょうり)は好評(こうひょう)です。

 「うり坊(ぼう)のロースト」は、肉質(にくしつ)の柔(やわ)らかい子イノシシを弱火でじっくり焼(や)きました。成獣(せいじゅう)は筋肉質(きんにくしつ)なので薄切(うすぎ)りにしますが、幼体(ようたい)は食べ応(ごた)えのある厚(あつ)さが可能(かのう)。濃厚(のうこう)な脂(あぶら)のうまみもしっかり味(あじ)わえます。「イノシシのバラ肉のハム」は野性味(やせいみ)を感(かん)じる力強い味。木の実(み)をたくさん食べて太る晩秋(ばんしゅう)のメスが最(もっと)もおいしいそうです。

 こうしたレストランを経営(けいえい)するためには材料(ざいりょう)の安定供給(あんていきょうきゅう)が不可欠(ふかけつ)。谷汲地区には狩猟免許(めんきょ)を持つ猟師(りょうし)が移住者(いじゅうしゃ)も含(ふく)めて20人おり、駆除(くじょ)・捕獲(ほかく)された野生動物(どうぶつ)が1時間以内(いない)に運(はこ)び込まれます。11月から翌年(よくねん)3月の猟期(りょうき)に猟師はイノシシ1頭につき1万円の報償金(ほうしょうきん)を町から受(う)け取(と)ります。行政(ぎょうせい)も一体となり有害(ゆうがい)鳥獣対策(たいさく)とジビエ産業(さんぎょう)、そして過疎化(かそか)が進(すす)む中山間地域(ちゅうさんかんちいき)の振興(しんこう)を成(な)り立たせています。

 でも、問題(もんだい)は解決(かいけつ)しません。町のイノシシとシカの総(そう)捕獲数は年々増加(ぞうか)し、2017年度(ねんど)は約(やく)1700頭。同町議会議員(ぎかいぎいん)でぎふジビエ振興協会(きょうかい)会長も務(つと)める所竜也(ところたつや)さん(44)は、「とってもとっても減(へ)らない」と明かします。それほど繁殖(はんしょく)している野生動物。行政の主導(しゅどう)で全国(ぜんこく)に加工処理施設が造(つく)られていますが、猟師と加工業者、そして食肉の消費量(しょうひりょう)は足りていないのです。

なめし加工で剥製や敷物に

 食肉にする野生動物(やせいどうぶつ)を無駄(むだ)なくいかしたい。命(いのち)を奪(うば)うことを重(おも)く受(う)け止め、そう考える人たちがいます。昨年(さくねん)12月に岐阜県郡上(ぎふけんぐじょう)市で地元の猟師(りょうし)らが開(ひら)いた1泊(ぱく)2日の皮(かわ)なめし講座(こうざ)に、全国(ぜんこく)から女性(じょせい)6人を含(ふく)む15人が集(つど)いました。

 皮なめしとは、腐敗(ふはい)しやすい動物の「皮」を、なめし剤(ざい)を浸透(しんとう)させることで耐久性(たいきゅうせい)のある「革(かわ)」に変(か)えること。参加者(さんかしゃ)は解体処理(かいたいしょり)されたイノシシやシカ、タヌキなどを受け取(と)り、まずは皮の内側(うちがわ)に残(のこ)る肉や脂肪(しぼう)を鎌(かま)などでそぎ落(お)とします。さらに洗剤(せんざい)でも脂肪分を除去(じょきょ)。この下処理が出来を左右します。その後は、なめし液(えき)に漬(つ)け込(こ)み、乾燥(かんそう)と延(の)ばして柔(やわ)らかくする作業(さぎょう)を繰(く)り返(かえ)し、仕上(しあ)げます。

 熟練(じゅくれん)者でも根気(こんき)のいる作業ですが、材料(ざいりょう)は簡単(かんたん)に手に入り、家庭(かてい)でも可能(かのう)です。また、完成度(かんせいど)を求(もと)める過程(かてい)が面白(おもしろ)く、参加者は夜中や早朝まで黙々(もくもく)と取り組みました。イノシシの皮は硬(かた)く、毛もゴワゴワしているため、敷物(しきもの)やオブジェに向(む)いています。主宰(しゅさい)する安田大介(やすだだいすけ)さん(39)は「なめすことで動物をより深(ふか)く知ることができ、愛着(あいちゃく)も深まります。農耕以前(のうこういぜん)の手仕事(てしごと)の世界(せかい)です」と説明(せつめい)しました。

 皮以外(いがい)も活用できます。三重(みえ)県松阪(まつさか)市のドッグフード販売(はんばい)会社では、猟師から持(も)ち込まれた野生動物を解体処理し犬の生食用に販売。同社によるとイノシシには保温(ほおん)や血行促進(けっこうそくしん)、解毒(げどく)などの薬膳効果(やくぜんこうか)があり、頭や骨(ほね)は煮(に)てだしを取ります。捨(す)てる部分(ぶぶん)は腸(ちょう)と肛門(こうもん)だけ。98%近く使(つか)い切れるそうです。

 このように、有害鳥獣(ゆうがいちょうじゅう)の活用法(ほう)はいろいろ。ただし、安全(あんぜん)に消費(しょうひ)するための仕組みづくりは重要(じゅうよう)な課題(かだい)です。亥年(いどし)をきっかけに、そんな“イノ”べーション(変革(へんかく))を考えてみませんか?

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