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知るコレ!

大阪万博から未来へ 太陽の塔

1970年の大阪万博(おおさかばんぱく)でガイドを務(つと)めていた井上哲彦(いのうえてつひこ)さん=大阪府吹田(ふすいた)市で

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 見る人の心をつかむ巨大(きょだい)な顔、大空に腕(うで)を広げて立つシンプルで異様(いよう)な姿(すがた)。太陽(たいよう)の塔(とう)は1970年、日本万国博覧会(ばんこくはくらんかい)(万博(ばんぱく))が大阪(おおさか)で開(ひら)かれた時に作られました。今年は48年ぶりに内部(ないぶ)が公開(こうかい)されたほか、大阪府知事(ふちじ)は先月、塔の世界遺産(せかいいさん)の登録(とうろく)を目指(めざ)すと表明(ひょうめい)。2025年の大阪万博の開催(かいさい)も決(き)まり、さらに注目(ちゅうもく)されそうなその魅力(みりょく)に迫(せま)りました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

内部オブジェ見学が人気

 一九七〇年の万博(ばんぱく)は、「人類(じんるい)の進歩(しんぽ)と調和(ちょうわ)」というテーマのもと、大阪府吹田(おおさかふすいた)市で開催(かいさい)。大人気だった「月の石」をはじめ、国内外の科学技術(ぎじゅつ)の成果(せいか)などが紹介(しょうかい)され、半年間で六千四百万人以上(いじょう)が訪(おとず)れました。

 会場の入り口正面(しょうめん)で、大屋根(おおやね)を突(つ)き破(やぶ)り立っていたのが、高さ七十メートル、縄文時代(じょうもんじだい)の土偶(どぐう)のような太陽(たいよう)の塔(とう)です。制作者(せいさくしゃ)は、芸術家(げいじゅつか)の故岡本太郎(こおかもとたろう)さん。中央(ちゅうおう)の「太陽の顔」が現在(げんざい)、頂部(ちょうぶ)の「黄金(おうごん)の顔」が未来(みらい)、背面(はいめん)の「黒い太陽」が過去(かこ)を表(あらわ)すそうです。万博後ほぼすべての展示施設(てんじしせつ)が撤去(てっきょ)される中で、塔の保存(ほぞん)を求(もと)める声が高まり、七五年に永久(えいきゅう)保存が決定(けってい)。今も万博記念(きねん)公園内にあります。

 三月、大阪府が内部の展示を修復(しゅうふく)して公開すると、見学(有料(ゆうりょう))は四カ月先まで予約(よやく)が埋(う)まる人気に。「当時待(ま)ち時間が長くて入れなかった。ようやく入れた」と喜(よろこ)ぶ年配(ねんぱい)の人や、「遠足でよく来ていて一度(ど)入ってみたかった」という子どもたちも来るそうです。

 中に入ると、荘厳(そうごん)な音楽に、幻想的(げんそうてき)な赤い空間。「中央のオブジェが『生命(せいめい)の樹(き)』。高さは四十一メートル。三十三種類(しゅるい)の生き物(もの)の模型(もけい)でダイナミックに表されています」。そう説明(せつめい)してくれたのは当時、塔のガイド役(やく)だった大阪市城東区(じょうとうく)の井上哲彦(いのうえてつひこ)さん(71)。「当時は人があふれ、マンモスや口がパクパク動(うご)くゴリラが人気でした。警備(けいび)で塔内に一泊(ぱく)したこともあるんですよ」

 生命の樹は、一メートルほどの単細胞生物(たんさいぼうせいぶつ)アメーバなどから始(はじ)まります。上に行くほど時代が新しく、百四十五段(だん)の階段(かいだん)を上りながら、三葉虫(さんようちゅう)や高さ十二メートルの迫力(はくりょく)あるブロントサウルスなども楽しめます。最上部(さいじょうぶ)は六十センチ強の現代人の祖先(そせん)・クロマニヨン人。「昔(むかし)の生き物に比(くら)べて小さいでしょ。人よ思い上がるな、という太郎さんのメッセージでしょう」と話しました。

現代に通じるメッセージ

 なぜ太陽(たいよう)の塔(とう)は今も人々を引(ひ)きつけるのでしょう。

 岡本太郎記念館長(おかもとたろうきねんかんちょう)で、塔の内部(ないぶ)の再生(さいせい)を指揮(しき)した平野暁臣(ひらのあきおみ)さん(59)は「外観(がいかん)はあれほどの存在感(そんざいかん)なのに意味不明(いみふめい)。自分で感じ、考えるしかない。しかも生き物(もの)みたいにこちらをにらんで立っている。そんなもの、他(ほか)にないでしょう? 生命(せいめい)の樹(き)だって似(に)たものがない。太陽の塔は“はじめての体験(たいけん)”をプレゼントしてくれるから」と分析(ぶんせき)します。

 では岡本さんが表現(ひょうげん)したかったものとは。「万博(ばんぱく)は、技術(ぎじゅつ)の進歩(しんぽ)が人を幸(しあわ)せにすると訴(うった)えるイベントですが、その真(ま)ん中に土偶(どぐう)のような太陽の塔を突(つ)き立てたのは『万博の価値観(かちかん)なんか信(しん)じるな! 未来(みらい)を考えるなら、まずは根源(こんげん)を見据(みす)えよ』と言いたかったからでしょう。技術が開(ひら)く夢(ゆめ)の未来を無邪気(むじゃき)に信じられない時代(じだい)を生きるぼくたちにはよく分かります」

 長く人々を魅了(みりょう)し、深(ふか)い問(と)いも投(な)げかけてきた太陽の塔。七年後の大阪(おおさか)万博でも、こんなシンボルが誕生(たんじょう)するといいですね。

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